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月刊桜坂通信 | スポンサー広告 |
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:03:44.72 ID:00ghteueO
「私から何もかも奪うんだもの…」

アルムおんじが死に、すっかり廃墟のようになってしまった山小屋でハイジは言った。

「私達…初めから会わなければよかったわね……」

「ハイジ…」

「ふふふ…さようなら。馬鹿で意気地無しのクララ。あれは本音だったのよ。」

「ハイジ…待って!ハイジ―――――――――!!!!!!!」


扉の閉じる音がした。

クララは縛られて冬の山小屋に一人取り残されてしまった。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:05:31.55 ID:00ghteueO
クララが初めてアルムの山に来たとき、ハイジの中である感情が芽生えた。

「どうして…ペーターがクララを背負うの?」

「クララは歩けないことを利用してるんだわ…」


なんとかしなくては…。


それからと言うもの、ハイジはクララを歩けるように練習させた。
もう山には行かせずに。

表向きはクララのため。

しかし実はクララを監視下に置き、ペーターと会わせないため。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:08:21.01 ID:00ghteueO
それからというもの、クララをみる度にある感覚に襲われた。

「…」


大切に育てられ、屈託なく笑うクララ。

肌は雪のように白く、金髪に美しい青い目。

ハイジにないものを全て持っているかのように思えた。


私は………。


やり場のない感情がハイジを埋め尽していった。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:10:57.40 ID:00ghteueO
「ハイジ!」

「…ペーター………」

「クララの調子はどう?」


またか…。

みんなしてクララクララという。

あのおばあさんまで、クララの朗読に涙を流す始末だ。


…。


クララなんて、消えてしまえばいいのに。

そう思うことが多くなり、いつしかクララに対する友情は憎しみに変わっていた。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:15:22.31 ID:00ghteueO
「…」

すやすやと眠るクララはまるで人形のように見える。


この首を絞めてやろうか…。

最近毎日思うのだ。


足の訓練のときも足をへし折ってやりたいという思いにかられる。


そこにはもう一つの屈折した感情があった。

しかしハイジはまだ気づいてはいない。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:18:12.70 ID:00ghteueO
「…!」

なにやら表が騒がしい。

クララが車椅子を懐かしみ、不自由な足で取ろうとして壊したらしい。

下には無惨な車椅子の姿があった。


クララが乗ってたらよかったのに…。

運までいいなんて、本当に…こいつは………。


この醜い思いは蓄積していくばかりだった。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:21:00.21 ID:00ghteueO
思えばハイジの人生は恵まれないものだった。

小さい頃、覚えているのは耳の遠い婆との暮らし…。

ハイジはいつも孤独だった。

唯一頼れるはずのデーテには厄介ものだと思われているのが口に出さなくても伝わってくる。

いや、はっきり言われたことも決して少なくない。


ハイジのどこか歪んだものの見方はこの頃形作られたのかもしれない。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:24:40.59 ID:00ghteueO
それからは殺人の前科があるというアルムおんじと二人で住むことになった。

ここでの暮らしはハイジにとって初めての経験だった。

もう何も心配しなくていいのだ。

楽しかった。

ペーターやピッチー、大角の旦那やかわいいの。
それにヤギ達、ヨーゼフ。

天国にいるようだった。

ハイジはその生い立ちを感じさせないほどまでに幸せに暮らしていた。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:28:48.64 ID:00ghteueO
ペーターのおばあさんとお話もした。

ハイジはここで必要とされていたのだ。

これまで散々疎まれてきたハイジにとって初めての経験だった。

ハイジは自分の存在を強く感じていた。

生きる気力に満ち溢れていた。

ペーターと二人だけの秘密のお花畑。

あの場所はハイジにとって特別な場所となった。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:32:01.96 ID:00ghteueO
口笛も教えてもらった。

いい匂いのする草はヤギの好物だということも。

シロとクマに塩を舐めさせるときは手が擽ったかった。

何より隣にはいつもペーターがいた。

どこか他の子と違うハイジをペーターは何事もなく受け入れた。

チーズやパン、干し肉も二人で食べた。

ハイジはすっかり元気になっていた。

過去を忘れ、現在を生き生きと過ごしていた。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:35:29.56 ID:00ghteueO
そんなときあの女がやってきた。

ハイジにとって負の過去の象徴のような、あの女が。

ハイジを邪魔もの扱いし、基本的な人格を歪める原因であろうあの女が。

幸せに暮らしていたハイジに恐らくもう一生拭えないであろう暗い陰を落とす出来事の始まりを告げにやってきた。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:40:15.01 ID:00ghteueO
おんじはこれは危険だと感じていた。

ハイジの身を滅ぼしてしまうのではないか。

何か将来とんでもないことが引き起こされるきっかけになるのではないかと。


おんじは怒鳴った。

その恐ろしい考えも吹き飛ばすように。

考えたくない…あのハイジが………。


しかしハイジの中にある屈折したものの見方にも気付いていたのだった。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:45:02.70 ID:00ghteueO
アルムおんじは結局折れた。
半やけくそのようになってしまっていた。

あの女は勝ち誇ったかのように笑い、ハイジを騙し連れ去った。

おんじは確信が持てなかった。

ハイジがどうなるのか。

考えれば考えるほどおんじ自身が追い詰められていった。

彼もまた、殺人という過去に蝕まれていたのだ。

結局この決断は誤っていたことになる。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:48:38.44 ID:00ghteueO
「嘘でしょう…姉さん、義兄さん…」

幼子を抱き、墓の前で呆然とする。

「私は…」


言いたいことは山ほどあった。

仕事も上手く行っていた。

住み込みで働き、貯金も僅かながらできた。

お互いに淡い恋心を抱いていた相手もいた。

それなのに…なぜ。

なぜ今なのだろうか。

デーテは幼いハイジとの今後を考え、押し潰されそうになっていた。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:53:39.12 ID:00ghteueO
ハイジの泣き声がうるさいと住み込みの仕事がなくなった。

姉の子供を引き取ったというと恋人は離れていった。

貯金を切り崩して生活した。

ハイジを預かってくれる人を必死で探し、毎日朝から晩まで働いた。

ふと気がつくと2年の月日がたっていた。



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 02:58:16.83 ID:00ghteueO
「私は何をやってるんだろう…」

一回考え始めるとずっとその思いに取り付かれてしまう。

なぜ私が面倒をみなきゃいけないの…私の人生はこの子のせいで………。


いや、その前から前兆はあった。

姉のアーデルハイドには何をやってもかなわなかった。

常に嫉妬してきた。

彼女の夫だって先に好きになったのはデーテだった。

それをアーデルハイドは軽々と手に入れてみせた。

ハイジは彼の子でもあるのだ…その思いがあるから面倒を見たのかもしれない。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:03:11.11 ID:00ghteueO
そんなときドイツで働かないかという話がきた。

願ってもないチャンスだ。

でも気になるのはやはりハイジのことだ。

この子をどうすればいい…どうすれば…………。

答えは出ていた。

しかし殺人を犯したという事実が決断を鈍らせていた。

デーテは結局のところハイジを愛していたのだ。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:08:39.84 ID:00ghteueO
しかしこの先の見えない生活に限界を感じていた。

今の暮らしから抜け出したいという気持ちが勝った。


「ごめんね、ハイジ…ごめんね……」


決断の日の夜、デーテはハイジを抱いて眠った。

ハイジの幸せを願って一緒に寝たのだった。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:15:49.19 ID:00ghteueO
「ハイジ…ごめんね…ごめんね……」

デーテはハイジの寝顔を見ながら呟く。

私はこの子の人生を狂わそうとしているのではないか?

いや、ハイジはこれで幸せになれるはず。

デーテは自分の決断が誤りだと認めるのを怖れ、真実を見つめようとしなかった。

そこにはやはり姉や義兄への愛憎が絡んでいたのかもしれない。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:22:52.92 ID:00ghteueO
ハイジは愕然とした。

夕方には帰ると言ったのに…。


【裏切られた】


頭にあるのはこのことだった。

デーテはもちろん、アルムおんじにたいしての信頼もハイジの心の奥底で急速に失われていった。

前もこんなことがあったような…?

汽車の中でハイジは堪えがたい苦しみに堪えていた。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:25:02.70 ID:00ghteueO
クララは緊張していた。

もう少しで話し相手が来るのだ。

どうしてもソワソワしてしまう。


「お嬢様」


さっきから何度もロッテンマイアーさんにたしなめられる。

「だって、楽しみなんですもの…」

どんな子かな。
仲良くなれるのかな。
私のことを気に入ってくれるかしら?

クララの胸は期待に満ち溢れていた。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:31:07.98 ID:00ghteueO
ベルが鳴った。

暫くしてガチャ…っとドアが開く。

ロッテンマイアーさんと女の人が話している。


「あ…」

見えた。
あの子なのだ。

嬉しくなった。

これから何を話そうか。
名前はなんというのだろうか。

早く話したい。

女の人が走り去った。
ロッテンマイアーさんが追い掛ける。

あの子と二人になった。

クララは深呼吸をして話しかけた。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:35:45.73 ID:00ghteueO
その夜クララはなかなか眠れなかった。

「ハイジ…ふふふ」

早く明日になったらいいのに。

たくさんお話したいわ。

クララの目の前には希望の光が広がっていた。



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:38:34.57 ID:00ghteueO
「おじいさん…ペーター…」

ハイジはまだ実感が沸かなかった。

しかしだんだん昨日の記憶が戻ってきた。

「あ…服………」

あの大切な服。

赤と黄色の、おじいさんが買ってきてくれた大好きな服…。


アルムの山を感じさせるあの服を取り上げられ、ハイジの心はどうにかなってしまいそうだった。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:40:01.02 ID:00ghteueO
朝から続く礼儀作法、ドイツ語の勉強。

初めてのことばかりで全てが負担になっていた。

毎日夢に見るのはアルムの山…。

フランクフルトの生活で唯一心が安定するのはクララといるときだった。

クララがいてよかった。

セバスチャンも味方だとわかり、いつしかハイジはフランクフルトの生活に慣れていったかに見えた。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:43:31.53 ID:00ghteueO
しかしやはりそのストレスは相当なものだった。

ドイツ語の授業中、居眠りをしたハイジは夢でアルムを見て現実と混同し、奇妙な行動をとってしまう。

いきなり立ち上がり「さようなら」とあらぬ方向を見て叫んだのだ。

このときハイジの中で何かが芽生え、それにより運命は傾いていったのではないだろうか。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:45:19.26 ID:00ghteueO
逃げ出そうとしたこともある。

もう我慢がならなくなったのだ。

それは防衛反応だったのだろう。

しかし連れ戻されてしまった。


【ロッテンマイヤー】


今度はこの存在がハイジを大きく歪めていく。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:51:49.56 ID:00ghteueO
そのときもらった子猫も捨てられた。

後に一匹保護したミーちゃんも。

その度に叱られた。

クララの小鳥を逃がしたときも、テーブルマナーのなっていないときも叱られた。

会う度に小言を言われている気がする。

同じことをしていてもクララは言われないのだ。

不公平ではないか。

理不尽な扱いをされるたび、ハイジは歪められていった。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:53:24.13 ID:00ghteueO
そんなときクララの父親であるゼーゼマンさんが帰ってきた。

この頃になるとハイジはもう自分から何かをしようという積極性を出さないようにしていた。

ただ淡々とそこにいた。

しかしこの人はハイジにもクララと同じ人形をくれたのだ。

公平な扱い…嬉しかった。

久しぶりに自分の存在を感じられた。



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 03:56:20.68 ID:00ghteueO
しかしゼーゼマンさんはすぐに帰ってしまった。

その代わりにクララのおばあさまが来たのだ。

「奥様」と呼ぶように言われ、必死で練習した。

ロッテンマイアーの目があるかもしれないとハイジはなかなか心を開けなかった。

しかしそんな心配は無縁だった。

おばあさまはとてもいい方だったのだ。

ロッテンマイアーに意見し、下手したらクララよりハイジの方を可愛がってくれたかもしれない。

それによりハイジとクララはますます親密になっていった。

フランクフルトで一番楽しい時期だった。



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:01:11.54 ID:00ghteueO
オルゴールの隠し部屋でおじいさんやペーターを思い出す絵を見て泣いてしまったとき、慰めてくれたのもおばあさまだった。

ピクニックにいったときは本当に楽しかった。

しかし…クララに熱を出させてしまった。

歩けないクララを放っておいて少年達と遊んでしまった。

自分はこんなに嫌な人間だったのか…やはり楽しんではいけないのだろうか…。

ハイジは人知れず苦しんだ。



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:05:52.75 ID:00ghteueO
足が悪く、自分は嫁にいけないと嘆くクララのためにお嫁さんごっこをやった。

おばあさまはその途中で帰ってしまった。

見送ってから戻ると閑散としていてチネッテが後片付けをしていた。


もう終わったのだ…おばあさまはもういない。

ロッテンマイヤーは今までの不満を全て自分にぶつけてくる…。

ハイジのどこかが壊れた。



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:08:46.54 ID:00ghteueO
それからゼーゼマン家では幽霊騒動が起きた。

ゼーゼマンとクララのお医者様が調べたところ、それは夢遊病のハイジだった。

やはりハイジは危ないところにいたのだ。


山に帰れることになった。



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:12:43.58 ID:00ghteueO
クララはハイジが帰ってしまうのを嘆いた。

そして後悔し、自分を責めた。

こうなってしまう前に私が気づいてあげなきゃいけなかったんだわ…。

ハイジ…ごめんなさい…。

私はあなたが大好きなのに、傷付けてしまったわ…。


ハイジの幸せを願い、別れを受け入れた。



60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:18:05.80 ID:00ghteueO
やっと帰れる…本当に?

実感はなかなか沸かなかった。

アルムに帰るという希望はもうとっくの昔に捨てたのだから当然かもしれない。

クララと別れ、セバスチャンと汽車に乗った。

クララと離れるのも悲しいが今はそれどころではないくらい緊迫した状態だったのだ。

汽車は行きと同じとは思えないほど清々しい空気に満ち溢れていた。



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:23:09.48 ID:00ghteueO
それからというものハイジは瞬く間に元気を取り戻して行った。

ヤギ達と遊び、ペーターとそり遊びもした。

学校にも通い、他の子供達との交流も深めた。

しかし一番仲がいいのはやはりペーターだった。



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:26:01.87 ID:00ghteueO
競走用のそりを作ると言って家にくるペーターを眺めるのが幸せだった。

おばあさんに本を読んであげているときも、必要とされているんだという実感がハイジを高揚させた。

そうだ、これが私なんだ。


しかしフランクフルトでの出来事はハイジをいつまでも苦しめていた。



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:29:47.62 ID:00ghteueO
ある日手紙が届いた。

クララが山に来るというのだ。

ハイジは純粋に嬉しかった。

辛いフランクフルトでの生活も、クララがいたからあそこまで耐えられたのだ。

ハイジはクララが来る日を待ちわびた。



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:36:21.19 ID:00ghteueO
しかし来たのはクララの医者だった。

ハイジはなんとかしてアルムの山を気に入ってもらおうと努力した。

おんじも協力し、ついにクララが山に来ることになった。



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:36:50.09 ID:00ghteueO
「クララ!」

「ハイジ!」


クララの乗った馬車を見つけ喜ぶ。

しかしそこにはロッテンマイヤーの姿もあった。

ハイジの表情が曇る。

歪められていた記憶が蘇る。



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:40:46.65 ID:00ghteueO
しかしハイジの脳はそれを押しとどめ、馬車に乗った。

驚く子供達。

ハイジは大好きな山にクララがいる喜びを感じていた。



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:44:47.52 ID:00ghteueO
「アーデルハイド!」

またあの日々が始まった。

しかし違うのはここにはおんじがいてくれることだった。

「ロッテンマイヤーさん」

とハイジやクララをかばってくれる。

しかしその存在だけでハイジを壊すには十分だった。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:49:16.79 ID:00ghteueO
「アーデルハイド!お嬢様になんてことを!」

私じゃないわ。
クララが言い出したのよ。

「アーデルハイド!」
「アーデルハイド!」
「アーデルハイド!」


うるさいわ!
私はハイジよ…。


ハイジの異変に気づいたのはおんじだった。



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:53:13.08 ID:00ghteueO
「ハイジ、なにをしているんだ?」

小屋の影にいるハイジを見て驚愕した。

「…ヨーゼフのご飯になると思って」

その手には殻を割られ、身も千切られたカタツムリが握られていた。

「ハイジ…」


やはりあの存在はいけない。

おんじは手紙を書いた。



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 04:57:10.67 ID:00ghteueO
ロッテンマイヤーに対抗でき、ハイジの味方になることの出来るおばあさまがアルムの山に来ることになった。

ロッテンマイヤーは不機嫌になり、ペーターにまで当たり散らした。

ハイジの心はおばあさまを待つことによって保たれていた。



81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:02:10.49 ID:00ghteueO
「ロッテンマイヤーさん」

誰もが彼女をそう呼んだ。

子供の頃から打ち解ける相手などいなかった。

遊び、楽しみは悪だと教えられた。

ひたすら優秀、有能を求められそれに答えてきた。

それなのに何故…誰も私を愛してくれない。

彼女も人知れず苦しんでいた。



84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:08:16.75 ID:00ghteueO
私は優秀。
遊びは悪。
何かを楽しむなど堕落した人間のすること。
私は有能。

楽しそうな人を見る度に呪文のように唱えた。

私はあんな奴らとは違うわ。
ちゃんと将来を見据えているのよ。


【一緒に楽しみたい】


この気持ちを押し殺し、優秀な執事を目指し勉強していた。



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:12:21.54 ID:00ghteueO
そうしてゼーゼマン家への就職が決まった。


「ゼーゼマン家といったらフランクフルトでも1・2を争う大金持ちじゃない!」

「すごいわねぇ」

人々の賛辞が心地よかった。

ますます有能であろうと心に決めた。



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:15:20.89 ID:00ghteueO
「お嬢様、お勉強の時間です」

ゼーゼマン家の一人娘クララにも自分と同じようにしてほしかった。

そうすれば幸せになれると信じていた。

それは彼女がされたのと同じ教育方法だった。

幼い頃から当たり前だったのでロッテンマイヤーにとっては苦ではなかった。

しかしクララは違った。

恵まれた環境のため、優秀である必要がなかったのだ。



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:19:24.70 ID:00ghteueO
「もう!ロッテンマイヤーさんはうるさいわ!」

「お嬢様!」


こんなにお嬢様のことを考えているのになぜ…。

彼女は結婚せず、クララを実の子供だと思い育てていこうと懸命だった。

しかしクララは打ち解けてくれない。

あぁ…ここでもか。
私は一人。
でもいいのよ。
私は優秀。
私は有能なんだから…。

お嬢様を立派にするわ。

ひたすら自分なりにクララの幸せを願い行動した。



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:25:27.76 ID:00ghteueO
そんなある日、クララの話し相手が必要だという話がでた。

「確かにお嬢様には同年代の話し相手が必要ですわね」

彼女は賛成した。

周りに募集していることを知らせ、相手を見つけさせた。

最終面接は自分で行い、じっくり吟味しようと決めた。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:29:16.44 ID:00ghteueO
来たのはみすぼらしい服を来た汚れた少女と着飾った付き添い人だった。

見た瞬間駄目だと思った。

少女もそうだが、自分だけ着飾るような付き添い人に対してでもある。

いくつか質問をした後、付き添い人は逃げるように帰ってしまった。

「お待ちなさい!」

あんな子を置いて帰られては困るわ…!

必死で追ったが逃げられてしまった。

どうしよう…。

チネッテに水を持ってこさせ、ひたすら考えた。



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:34:48.92 ID:00ghteueO
やはり彼女の直感は当たっていた。

召し使いと対等な口を聞く。
テーブルマナーもなっていない。
アルファベットすら知らないのだ。

罰を与えればネズミを持ってくる。
勉強中居眠りをし、椅子に立ち上がり奇声を発する。お嬢様の小鳥を逃がす。

家出をすれば猫を持ち帰り、やかましい騒ぎを巻き起こす。

このままではお嬢様に悪影響だわ…。

なんとかしてお嬢様のためになるようにしないと…。

クララのために必死だった。



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:38:55.84 ID:00ghteueO
当主のゼーゼマンには何度も訴えた。

しかし彼はわかってはくれなかった。

あげくの果てには彼女が嫌いな「奥様」を呼ばれることになってしまった。

ロッテンマイヤーは絶望した。

いくら奥様といえどもあんな方を呼んだらアーデルハイドに共感して私の考えをわかっていただけないわ…。

あんな…金持ちだからって努力もせず、ただ遊んで楽しんでいる人になんて。

こう思わなければ彼女の人生が否定されてしまう。

危ういバランスで自我が保たれていた。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:44:56.91 ID:00ghteueO
思ったとおりだ。

食器を鳴らし、勉強を後回しにさせる。
屋敷で毎日のように遊び、あげくの果てにはお嬢様を森に連れ回し、熱を出させる。

注意をした私は悪になる。


どっちが悪よ。
今がよければいいの…?
私お嬢様の将来を見据えているのよ。


「奥様」は庶民や音楽隊を屋敷に入れ、【花嫁ごっこ】をし汚れた床を置き土産に帰っていった。



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:49:18.10 ID:00ghteueO
その後、幽霊騒動が起きた。

医者によると、ハイジが山のことを考えるのを禁じたことが原因らしい。

「ハイジを幽霊にしたのはあなただ」

と言われ、はっとした。


アーデルハイド…私は…。

クララを思うあまり、ハイジのことを気にかけていなかった。

それどころか、敵だとみなしていた自分に気がついた。



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:54:23.39 ID:00ghteueO
ハイジが山に帰ることになり安心している自分に気づいた。

これでお嬢様もまともになるわ。


しかしハイジの去った屋敷はどこか違っていた。

ロッテンマイヤーの心に穴の空いたような感情が沸き起こっていた。

「アーデルハ…」

そうだ、もうあの子はいないんだったわ。

いいことじゃない。

平穏に…過ごせるわ。



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 05:57:50.31 ID:00ghteueO
もう関わらないかのように思えたが、クララの医者がアルムの山に行ったらいいと言ったため再び会うこととなる。

どんな態度をとればいいのかしら…。

優しくする…?
いいえ、そんなのは…。

何が【駄目】だと縛っているのか。

優秀にも関わらず、根本を理解出来ていなかった。



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:03:32.94 ID:00ghteueO
おばあさまが来て、ロッテンマイヤーが帰った。

ハイジとクララにとって束の間の幸せな時間が訪れた。

これが最後の純粋な幸せの時間だった。



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:07:20.75 ID:00ghteueO
クララは山を満喫していた。

大好きなハイジにおばあさま。

優しいおじいさんにペーター。

ある日クララはおばあさまに本を読んでいた。

寝てしまったおばあさまを微笑ましく見る。


そこに一つの影が近づいてきた。



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:12:27.42 ID:00ghteueO
「!」

牛だった。

クララは思わず木にもたれかかりながら足を踏ん張った。

無我夢中で牛から逃れようとしたのだ。

怖い!

それしか頭になく、崩れ落ちてしまった。



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:15:43.50 ID:00ghteueO
「クララ!」

おばあさまの声が聞こえる…。

「どうかしたんですか?」

おじいさんがやってきた…。

「クララが…立ったんです。牛に驚いて思わず…」


私が………立った……?



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:20:06.33 ID:00ghteueO
それからおばあさまは何回も私を立たせようとした。

おばあさま…いつもと違う。
なんか怖いわ…。

ハイジも喜び、私の足はもう立てるということになった。

でも…。

クララは自分の足で立つのを恐れていた。

それは立てなかったときにどうなるのかを恐れていたのかもしれない。



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:25:46.55 ID:00ghteueO
立つ練習が始まった。

ハイジやおじいさんが一生懸命になってくれている。

ありがたいと同時に期待に答えなくてはという重圧があった。



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:29:13.94 ID:00ghteueO
おばあさまも待ってるわ。

早く立たなきゃ…立たなきゃ…。

それは夢にまで出てきた。

そしておばあさまが温泉に滞在することになり、お別れのパーティーが開かれた。



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:35:23.90 ID:00ghteueO
走り回る子供達。

ハイジもペーターも…。

とてもみじめだった。

おじいさんが抱き上げてくれた。

皆と一緒にいたくなかった。


初めて自分から立ちたいと強く思った。



115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:38:30.08 ID:00ghteueO
それからは本当に必死で練習した。

今まで特別努力しなかったクララの初めての挑戦だった。

助けてくれる皆が大好きだった。

ペーターのおばあさんに本を読んで感謝されたときはなんともいえない幸福感に満たされた。

しかしこの頃から気になることが出てくる。



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:44:40.50 ID:00ghteueO
またあの感じだわ…。

「ハイジ…?」

「なあに」

「あ…なんでもないの」

「そう」


どうしたのかしら、ハイジ…。

なんだか、私を見る目が冷たいような…この感じはなんていうのかしら?

今まで自分に向けられたことのない感情に戸惑っていた。



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:50:56.69 ID:00ghteueO
努力を続けるクララだったが、なかなか立てるようにならない。

つい愚痴が出てしまった。

「もう駄目だわ!こんな足!私立てないわ!」


「なによ!足のせいにして!」

ハイジに怒られる。



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:53:53.48 ID:00ghteueO
「足はもう治ってるのよ!それなのに足のせいにして!クララの馬鹿!意気地無し!私もう知らない!」

走り去るハイジ。


「待って…!」


あ…あの感覚………。



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 06:58:35.72 ID:00ghteueO
ハイジと見つめ合う。

「クララ…」

「ハイジ…私……」

「クララが立ってる…」


ハイジと抱き合い喜んだ。


おじいさんにもペーターにも見せた。

ハイジも前に戻っていたように思えた。



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:02:22.34 ID:00ghteueO
歩く練習が始まった。

その途中でどうしても車椅子に会いたくなり、壁伝いに歩いていった。

しかし車椅子は転げ落ちてしまった。


私の車椅子さん…。


ずっと一緒だった友達がいなくなった気持ちだった。



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:06:57.03 ID:00ghteueO
そのときまたあの感覚を味わった。

え…ハイジ……?

ハイジは恐ろしい形相をしていた。

それはまるでクララの死を願うかのような…。

クララは信じたくなかった。


私ったら何てことを…。
ハイジは心配のあまりあんな顔をしてくれているのに。

真実を認めたくなかった。



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:10:02.11 ID:00ghteueO
ついにクララは歩けるようになり、フランクフルトに帰ることになった。

「おばあさまとパパをびっくりさせましょう!」

「それがいいわ!」

二人で計画をたてた。

そしてそれは見事に成功し、二人は涙を流し喜び、ハイジやペーター、アルムおんじに感謝した。



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:13:12.27 ID:00ghteueO
「ハイジ…またね!」

「元気でね…クララ」


クララは帰途についた。

屋敷でもずっとアルムの山のことを考えていた。



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:17:34.82 ID:00ghteueO
お嬢様が帰っていらしたわ。

ロッテンマイヤーはクララの帰りを心待ちにしていた。

屋敷で一人でいる間、沢山のことを考えていたからだ。



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:25:20.71 ID:00ghteueO
クララのお医者様とお話をした。

生い立ちから今までのことを全て話した。

山の空気を吸ううちに全てを話したい気になっていたのだ。

自分の考えの偏りに気づいた。

しかし決して間違っているわけではないとも言われた。

楽になった。

楽しむことも大切であり、自分も本心では皆と楽しみたかったのだとわかった。



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:34:32.00 ID:00ghteueO
それにお医者様は彼女の努力、優秀さを認めてくれた。

今までは疎まれるだけだったのに。

アーデルハイドに悪いことをしてしまった。

私を歪めていたような存在に…私はなってしまっていた。

「今、どんな気持ちですか?そして何がしたいですか?」

「アーデルハイドに…謝りたいですわ。そしてお嬢様と遊ばさせてあげて、それをただ見ていたいです」


お医者様は微笑んだ。



133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:39:08.79 ID:00ghteueO
もうすぐお嬢様が帰っていらっしゃるわ。

あ!馬車の音。

こんな気持ちは初めてだ。

期待に満ち溢れ、ただ喜ばせたい。

クララの姿が見えた。


「おかえりなさいませ、お嬢様」

クララは一瞬驚いたが、すぐ「ただいま、ロッテンマイヤーさん」と返してくれた。


135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:44:57.58 ID:00ghteueO
「ロッテンマイヤーさん」

ゼーゼマンが言った。

「ロッテンマイヤーさん」

奥様も。

奥様…私今ならわかります。
あなたとお話したかったのです。

「クララがね、立ったんですよ」

「そして歩いたんです」



136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:49:00.89 ID:00ghteueO
「まあ…!」

信じられなかった。
そして心が充実するのを感じた。

「お嬢様…本当に……おめでとうございます………」

思わず涙ぐむ。

よかった…本当によかった……。
アルムの山は…私の心を溶かしてくれたばかりか、お嬢様の足まで…………。

ありがとう…ありがとう。



137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:53:28.91 ID:00ghteueO
「お嬢様、歩く練習はなさらないのですか?」

ふと聞いてみる。

クララはとても驚いていた。

「どうかなさいましたか?お嬢様」

「いえ…なんでもないわ!ロッテンマイヤーさん!私歩く練習をするわ!」

練習に付き合うのが幸せだった。



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 07:58:14.33 ID:00ghteueO
またお嬢様とアルムに行けたら…。

階段を歩けるまでになったクララを見て考えていた。


「だいぶお上手になりました。これでまたアルムの山に行けますね」

「ロッテンマイヤーさん…!」


冬の間は二人でアルムの山を夢見た。



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:04:50.38 ID:00ghteueO
しかし春が迫った頃、クララのおばあさまが突然倒れた。

すぐにロッテンマイヤーが見舞いに行った。


「ロッテンマイヤーさん。あなたは本当は優しい人。私にはわかっていましたよ」

「奥様…」

「最近は自分に素直におなりのようね。表情がとても柔らかいわ」

「はい。アルムの山のおかげですわ」

ロッテンマイヤーはにこやかに言った。



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:09:24.18 ID:00ghteueO
「まあ、あなたの口からそんな言葉が出るなんて…ふふふ」

奥様も笑った。

「私ももう一回、あの山に行きたいものだねぇ…」

「なにをおっしゃいます。行けますわ。共に参りましょう」

「そうなると、いいんだけどねぇ。」

寂しげな顔で言う。



142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:13:17.84 ID:00ghteueO
「そうだ!あなたにこのペンダントをあげるわ。これを私だと思って持って行ってちょうだい」

高価そうなペンダントだった。

「そんな…奥様!私にはもったいのうございます。そうですわ、お嬢様にでも…」

「いいえ、ロッテンマイヤーさん。これはあなたにあげたいの」

真剣な眼差しだった。


「わかりました…でも来年はきっと共に参りましょうね」


奥様は微笑むだけだった。

そして数日後、還らぬ人となってしまった。



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:16:35.70 ID:00ghteueO
「嘘よ!おばあさまがお亡くなりになったなんて!」

「お嬢様………」

その知らせはすぐにゼーゼマン家に届いた。


喜びに満ちた家は一気に悲しみに包まれた。

ハイジからの手紙が来ていたがセバスチャンが「残念ながら今回は行けなくなった」とだけ書いて返した。



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:21:34.64 ID:00ghteueO
「手紙だよー」

「ありがとう、ペーター。あ!クララからだわ!」


長い冬がやっと終わった。
やっとクララと会える。


複雑な気持ちはあったがハイジはクララに会えるのを楽しみにしていた。


「え…来ない…の………?」



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:27:33.07 ID:00ghteueO
「ハイジ、ご飯だよ。食べなさい」

「…」

「ハイジ」

「…」


あの手紙が来てからというもの、ハイジはずっと干し草のベッドで過ごしていた。

ペーターとも会わず、ご飯もろくに食べずに…。


おんじはフランクフルトに手紙を書いた。



148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:28:14.65 ID:00ghteueO
しかし返事は来なかった。

不幸なことに、配達途中でのミスがあり届くことはなかったのだ。



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:32:35.91 ID:00ghteueO
「おじいさん」

「ハイジ!大丈夫なのか?」

「ええ。私はなんともないわ。それよりお腹空いちゃった!ずっと食べてなかったんだもの!」

「…ああ…今準備するよ………」


明らかに様子がおかしかった。

なぜフランクフルトからなんの連絡もないんだ?

不可解な現象に戸惑っていた。



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:37:47.55 ID:00ghteueO
クララ…私を裏切ったのね。
きっと立てるようになったから向こうでお友達でもつくったんだわ。
私のことをあんなに苦しめたのに…あなただけ幸せになるというの?
…この悔しさはどうすればいいの?

ハイジは毎日一人で考えていた。



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 08:46:29.64 ID:00ghteueO
おんじはもう一度手紙を書いた。

そしてそれはゼーゼマン家に無事届いた。

それはロッテンマイヤーに渡り、悲しみに暮れる彼女にアルムのことを思い出させた。


「私としたことが…いくら奥様のことで忙しいとはいえアルムに手紙を出すのを忘れていたなんて……。」

直ぐに返事を書いた。



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:01:37.75 ID:00ghteueO
「ハイジ…フランクフルトから手紙が来ていた。…………クララのおばあさまが亡くなったそうだよ…」

おんじは悲痛な声で言った。


「おばあさまが…」

ハイジは愕然とした。


あの優しかったおばあさまはもういない…嘘…あれが最後だったの……?
また必ず会えると…絶対会えると信じて疑わなかったのに…おばあさま!おばあさま!


ハイジはずっと泣き通した。

クララが来ない悲しみをはるかに越えていた。


もう二度とおばあさまには会えないのね。

それはハイジの心の大きな支えが一つ失われたことでもあった。



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:06:24.03 ID:00ghteueO
おばあさまの死は皆を悲しませた。

クララの体調は悪くなり、今年のアルム行きは見送られた。

ハイジもまた、ますます塞ぎこむようになった。



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:10:50.65 ID:00ghteueO
「ねぇハイジー、久しぶりに山に行こうよ!」

ある日ペーターが誘ってくれた。

「ハイジ、行っておいで」

おんじが諭すように言う。


「ほら、パンとチーズに干し肉のお弁当だよ」

「やったー!ありがとうおんじ」


あ、懐かしい。

「うふふ…」

「ハイジ…!」

「あはははは!昔とおんなじね!」

「えへへへ…そうかな?」

そういって笑いあう。


「ハイジ…よかった。よかった」

おんじの目には涙が光っていた。



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:17:14.59 ID:00ghteueO
久しぶりの牧場…ヤギ達…こんなに空気が美味しかったなんて。

久しぶりにペーターと食べるお弁当。

あの乳の飲み方も変わってない。

幸せ…。


「ハイジ、まだクララは来ないのかい?」



161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:21:39.81 ID:00ghteueO
空気が凍りついた。


「ペーター…クララが…気になるの?」

「そりゃそうさー。また三人でここに来ようよ。きっと楽しいよ!」


そんな…ここは二人の思い出の場所じゃないの…?
いつからクララがそんなに…………。


「ペー…ーは…私と……二………嫌…な……?」

「え?なに?」

「ううん、なんでもない」

「そうか。あ!そのチーズもらっていい?」

「いいわよ…」


クララは好きだけど…でも…………。

ハイジは自分の気持ちがわからなかった。



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:27:49.91 ID:00ghteueO
そして冬になり、冬の家で過ごすようになった。

「ここでさ、パーティーやったよなー。あれ美味しかったなー!」

「もうすぐ春だねー。クララは来るのかな?」

「どれくらい歩けるようになったかなー」


「……………………」


なによ、クララクララクララクララって。


ペーターはそういう意味で言ってるんじゃない。
他の人が聞いたらなんでもないことじゃない。

それなのに………どうして?
私変ね。

クララの話題が出る度に心が痛んだ。



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:31:51.81 ID:00ghteueO
「ハイジー手紙だよー!」

手紙…クララ…?

「はい、これおんじに渡しといてね」

「わかった」


心臓が暴れて手が震える中、ハイジは手紙を開いた。



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:32:56.77 ID:00ghteueO
親愛なるハイジへ

去年はアルムに行けなくて本当にごめんなさい。
急におばあさまがお亡くなりになって、私何も考えられなくなったの。
すぐにあなたに知らせるべきだったのにごめんなさいね。

私はちょっとずつ元気になっていて今年は行けそうなんだけど、都合はいかがですか?
いいお返事を待っています。

クララより



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 09:39:22.12 ID:00ghteueO
クララ……ここ最近のクララに対する気持ちを忘れ、懐かしさに浸っていた。

結局ハイジはクララに友情を感じていたのだ。

おんじもペーターも代わりになれない対象としてハイジの中で確実に大きな存在となっていた。



170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:02:32.98 ID:00ghteueO
「ペーター!クララが来るわ!」

「本当かい?やったなー」

「嬉しいの?」

「そりゃ嬉しいよー」


おんじはハイジを見ていた。
どんな表情をするのか気になったのだ。
最近のハイジの気持ちに薄々感づいていたからだった。

「そう!私も嬉しい!楽しみね~」

本心から言っているようだった。
おんじは安心し、家の掃除を始めた。



171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:04:42.96 ID:00ghteueO
「お嬢様、支度は出来ましたか?」

「ええ、ロッテンマイヤーさん」

「では参りましょう」


ロッテンマイヤーはペンダントを見つめて微笑み、身につけた。

そして二人はセバスチャンを伴って旅立った。



173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:08:20.45 ID:00ghteueO
「まだかなー手紙では今日つくはずなんだけど…」

ハイジはペーターとクララを待っていた。

二回目というのは、なんとなく気恥ずかしさがある。

一年ぶりとなると尚更だ。

「あ!ハイジ!あれそうじゃないか?」

その方向にはこちらに向かってくる何人かがいた。



177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:11:59.93 ID:00ghteueO
「あ!そうだわ!あれがクララよ!歩いてるわ!」

「本当だ!クララだ!歩いてる!」

二人は喜んだ。
友に会えること、そしてその友が歩いてることを。


179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:16:57.07 ID:00ghteueO
「ハイジ!」

「クララ!」

かけより抱き合う二人。

すっかり元気になったクララは自分の足で山を登りきったのだ。

「お久しぶりです、お嬢様」

セバスチャンが言った。

「セバスチャン久しぶりね!」

向こうではクララとペーターが話している。



180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:20:48.85 ID:00ghteueO
「お久しぶり…アーデルハイド…」

「ロッテンマイヤーさん…お久しぶりです………」

どうしても萎縮してしまう。

でもなんか雰囲気が変わったような…?

もう皆は歩き出していた。

ハイジも慌てて行こうとする。

「待って…!」

「!?」



181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:24:34.50 ID:00ghteueO
「い…いえ…あの……なんでもございません」

「…」

ハイジは皆の元に駆け出した。


「わたくしの馬鹿…なぜ言えないのです……」

ロッテンマイヤーは悔やんでいた。



188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:38:52.31 ID:00ghteueO
ハイジとクララとペーターは毎日牧場へ行った。

不思議なことにロッテンマイヤーは何も言わなかった。

おんじは手紙のやりとりで彼女の変化を知っていた。

「ロッテンマイヤーさん、お昼にしませんか?」

刺繍を辞めて席につく。



189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:40:00.64 ID:00ghteueO
「最近下の村は物騒でしてな、あなたもここに泊まった方がいい」

「そうですわね…でもせっかくですが、下にはセバスチャンもいますしここではベッドもありませんので」

「そうですか。セバスチャンがいるなら大丈夫でしょうな。でも念のため、ヨーゼフを連れていくといい」

「おじいさん…そこまでの気遣いありがとうございます」

「いやいや、いいんですよ。今度あなたも牧場に行ったらどうです?」

「ぜひ行きたいですわ」

「はっはっは。本当に変わりましたなぁ」

「ええ、そう思います」


穏やかな時が流れていた。



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:46:05.07 ID:00ghteueO
その後二人は牧場から帰った三人を迎えた。

「それではお嬢様、また明日。おじいさん、アーデルハイド…お嬢様をよろしくお願いします」

「はい、ロッテンマイヤーさん」

「ヨーゼフ!」

「ワン、ワン!」

「じゃあ失礼いたします。ペーターさん、参りましょう」

「うん。じゃあまた明日ー」



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:52:18.30 ID:00ghteueO
小さくなる姿を見送り、三人で夕食にした。

「おじいさん、なぜヨーゼフは下に行ったの?」

「あぁ、最近村で強盗が相次いでおってな。物騒だから連れていかせたんだよ」

「まぁ、強盗なんて怖いわ。大丈夫かしら?」

「うむ…ここがもう少し広ければよかったんだがな…」

三人は溶かしたチーズを乗せた黒パンを美味しそうに頬張った。



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 10:56:49.76 ID:00ghteueO
「セバスチャン!いないのですか?セバスチャ………!?」

おかしい。

なにか生臭い臭いがする。

「きゃっ!」

床になにか転がっていた。

「セ…セバスチャン……?」

そこには胸から血を流し、血まみれになったセバスチャンの姿があった。



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:00:17.00 ID:00ghteueO
声が出なかった。

おじいさんの話を思い出していた。


強盗…まだいるのかしら?


「ワン!ワン!」

「なんだこの犬は!」

「おい!金を持ってるのはその女の方だぞ!」

「金を渡せ!邪魔な犬だ!」




銃声が轟いた。



201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:06:18.33 ID:00ghteueO
「あ…」

ヨーゼフが倒れた。
血が吹き出ている。


逃げなくては………。

必死で足を動かした。

しかし捕まってしまった。


「おい、金はどこにあるんだ」

襟首を持たれ、ゆすぶられる。

「お金を渡したら…どこかに行きますか?」

「あぁいくとも」



「奥の部屋の戸棚です…」

息が苦しい。



202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:11:08.05 ID:00ghteueO
「調べてこい」

首を持つ男が仲間に命令する。


「ありました!」

仲間が戻ってくる。



お金なら…なんとかなるわ。

それより助かりたい。

まだまだお嬢様の面倒をみたいわ。

牧場にだって行きたいし、アーデルハイドに謝ってもいない…奥様…助けて………。

ペンダントに手がのびる。



203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:15:09.36 ID:00ghteueO
「なんだ?」

男がペンダントに気づく。


「高そうなペンダントだ、これももらっていくぞ!」

「それは!それだけは!」

「うるせぇ!」


男はロッテンマイヤーの首を絞めた。

「あ………アーデルハイド…ごめんなさい……許して……ハイジ………………………」


「なに言ってんだ!早く死ね!」

「お…嬢……様……………」



206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:17:55.95 ID:00ghteueO
次の日の朝、ペーターが血相を変えて家に飛込んできた。

「どうしたの?ペーター」
「大将、なんかあったのか?」

ペーターは息が出来ない様子だ。

何度も深呼吸をしようとしている。

「お…おんじ…ハ…イジ…クララ………」


ペーターは真っ青な顔をしていた。



208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:20:55.36 ID:00ghteueO
「どうしたんだペーター、落ち着きなさい」

おんじがなだめた。


「落ち着いてなんか…いられないよ…昨日…下の村で!」


嫌な予感が走った。


「強盗が…出たんだよ…!」



209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:23:42.16 ID:00ghteueO
互いに顔を見合わせる。


「それで…?」


ペーターの次の言葉を固唾を飲んで見守った。


ペーターは震えながら


「ロッテンさんのとこに入ったんだよ」


と呟いた。



210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:27:37.97 ID:00ghteueO
その日は誰も口をきかなかった。

それぞれが死者との思い出を掘り起こしていた。


ロッテンマイヤーさん…セバスチャン…ずっと一緒にいたのに………嘘でしょ?
ヨーゼフだってとっても仲良しだったのに…こんなことって酷すぎるわ。


ヨーゼフ、あなたの存在は兄弟みたいなものだったわ。おばあさまが亡くなったときみたい。
セバスチャン…フランクフルトでも助けてくれた大好きな人よ…。

ロッテンマイヤーさん…ロッテンマイヤーさんだって、最近変わったみたいで私もっとお話してみたかったのに…………悲しいわ。



211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:31:15.93 ID:00ghteueO
ヨーゼフはアルムの山小屋の横に、ロッテンマイヤーとセバスチャンはフランクフルトに埋葬されることになった。


「亡骸は見ない方がいい」
というおんじの言葉でそのまま別れることになった。


数日間誰ともなく喪に伏していた。



212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:33:47.48 ID:00ghteueO
「ねぇクララ」

ある夜ハイジが語りかけた。

「人は死んでしまうとどうなるのかしら?」


クララは泣きそうになるのを堪えて言った。

「さぁ…天国に行くんじゃないかしら?」


「そう…じゃあみんな天国で幸せに暮らしているのかな?」

「そうね…きっとそうよ」


そして二人は抱き合い泣いた。

悲しみを分かち合い泣くことで苦しみを和らげようとした。



216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 11:43:06.40 ID:00ghteueO
それから数か月がたち、大分もとの生活に戻っていた。

「もうすぐ冬ね」
「そうね」

「クララはまたフランクフルトに戻るの?」
「そうしようかな」

「いつか冬も一緒に過ごせたらいいのに」
「私もそうしたいわ。そうね…あと何年かしたら、ここで冬を越すわ」

「うわぁーすてきすてき!」
「楽しみにしてるわ」

「私も!クララもここに住んじゃえばいいのに」
「いいわね…ここに住めたら幸せでしょうね」

「うん!何年かしたら一緒に冬を越そうね!約束!」
「ええ、約束ね」

「針千本よ」
「わかってるわ…ふふふ」


楽しげな笑い声が響いていた。



219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:00:28.84 ID:00ghteueO
クララが帰り、冬が来た。

そして春が来て、数年がたち、また冬になった。


「ゴホッ、ゴホッ」

「おじいさん、大丈夫?」

「あぁ、これくらい…ゴホッ」

おんじは煙草が祟ったのか肺が悪くなっていた。


「クララは…どうしてるかしら?」

ゼーゼマン商会は上手くいかなくなり、アルムに来るような余分なお金はなく、クララはずっと来ていないのだった。



220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:01:35.21 ID:00ghteueO
ハイジはふと思うのだ。

クララとはなにか。
私の嫌な経験には常にクララがいるのではないか。

私は今までに幾度となく虐げられてきた。
クララはどうだ、愛され慈しみながら育てられたのではないか。

足も治り、もうなにも引け目はないのではないか。

それに比べ自分は…。

昔の嫌な記憶が度々ハイジを襲うのだった。



222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:05:21.84 ID:00ghteueO
「ハイジー」

ペーターがやってきた。

「久しぶりね。元気だった?」

「あぁ、元気だよ!」

楽しい時間。

ペーターは今大工に弟子入りしている。
昔から木工細工が得意だったペーターだから、仕事もすんなりこなしているらしい。

「じゃあまたね、ハイジ!」


これがペーターと会う最後になってしまった。



226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:10:00.28 ID:00ghteueO
ペーターが事故にあって死んだと聞かされた。

おばあさんも亡くなったあの家で一人で生活するおばさんは大丈夫だろうか。

ハイジは考えた。

それよりも…ペーター……ここに来たときからいつも一緒で仲良しだったペーター。

ここ何年かはすっかり大人びていてハイジは密かに憧れていたのだ。

「ペーター…ペーター…………」


ハイジの心の箍がまた一つ外された。



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:12:18.81 ID:00ghteueO
ますますハイジは自分一人で考えるようになった。

なぜ…?
なぜこんなにクララと比べてしまうの?
私の評価ってなに?
どれが本物なの?
私は邪魔なの?
それとも必要なの?
どうしてクララは無条件で必要なの…?


…ペーター…おばあさま…ヨーゼフ…セバスチャン…おばあさん……。


ロッテンマイヤーさん…私あなたが憎いのかそうでないのかわからないの。

なぜか…クララの方が憎いわ。
恵まれてるからかしら。
私はあなたが恵まれていないことに気づいていたのかしら…?



229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:13:16.97 ID:00ghteueO
でもクララは好き…それも本当なのよ。

クララ自体は大好きよ。
でも他のものが入り込むと…どうしても悔しがってしまうの。

悔しいなんて思いたくない!
もうこんなこと考えるのは嫌よ…なにも考えたくないわ………。


孤独と寒さがハイジを蝕んでいった。



230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:16:13.99 ID:00ghteueO
「ゴホッ、ゴホッ…」

「おじいさん…大丈夫?」

「あぁ…大丈夫…だよ………」

しかしどうみても大丈夫ではなかった。

「ハイジ…お前は…強い子だよ…優しい子だ……」

ハイジはこれを聞いて最近の感情が溢れだした。



232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:18:34.36 ID:00ghteueO
「私は強い子なんかじゃないわ!優しい子でもない!」

小さい頃のように泣くハイジの頭をおんじはそっと撫でる。

「いいや…お前は強い、優しい子だ」

ハイジは首を振る。

「おじいさんは本当の私を知らないんだわ。私が…どんなにひねくれているか、
屈折してるか知らないでしょう!どんなに毎日苦しんでいるか…もう嫌よ!苦しい思いをするのはもう嫌!」



234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:22:29.10 ID:00ghteueO
「でも全てそうかと思ったら純粋なお前もいる、そうだろう?」

「え…………」

おんじは微笑んだ。

「わしは全部わかってるよ、ハイジ」

ハイジは泣き出す。

「教えて…」

「ん?」

「教えて…おじいさん。どうしたら私はこの醜い気持ちを抑えられるの?」

「ハイジ…」

「教えてよ!」



235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:24:22.41 ID:00ghteueO
「もう苦しむのは嫌なの!教えて!おじいさん!お願いよ…お願い………」

ハイジの悲痛な叫びが続く。



「ハイジや」

おんじが呟く。
耳を近づけないと聞こえない。

「お前はいい子だよ…わしにはわかる。これからも元気でな。大丈夫、お前なら…大丈夫………」

「おじいさん…?」



アルムおんじは安らかに永遠の眠りについた。





「おじいさーーーーん!!!!!!!!」

ハイジはとうとうアルムの小屋に一人になってしまった。



241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:32:03.10 ID:00ghteueO
同じように一人でいるブリギッテのもとを訪ねてみた。

しかしそこには誰もいなかった。

数日後、首を釣っているのが見つかった。


もう本当に誰もいない…私も皆のところへ行ってしまいたい。


誰も………?

いや、クララがいるわ。
クララ…会いたい…クララ…クララ…。



243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:37:21.25 ID:00ghteueO
そんなある日手紙が届いた。

父が死に、屋敷も全て売り払ったクララがアルムの山に来るというのだ。

クララが来る…クララも一人……同じだわ。

早く会いたい…話したい……………。



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:39:14.71 ID:00ghteueO
「ハイジ!」

思わずまどろんでしまったハイジに誰かが声をかけた。


「…?」

「ごめんなさい、寝てたのね」

そこにはあの時より少し大きくなったクララがいた。



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:41:10.77 ID:00ghteueO
「クララ…?クララなのね!」

「ええ…そうよハイジ!本当に久しぶり!」


二人は互いの無事を喜びあった。

そして悲しみを分かち合った。



251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:45:44.12 ID:00ghteueO
「本当に…誰もいなくなってしまったわね」

「そうね…」

「でも私にはあなたがいるわ、ハイジ」

ハイジは嬉しかった。

にも関わらず素直に喜ぶのを拒むものが心の中にあった。

なぜよ…なんでまた出てくるの?



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:46:51.55 ID:00ghteueO
「村も寂しくなったでしょう…皆引っ越していってしまったのよ」

「本当にね…屋敷の召し使い達ももう連絡は取れないし…」

「デーテおばさん!」

ハイジは急に思い出した。

「デーテおばさん…知ってる?クララ?」


クララはばつの悪そうな顔をした。

「どうしたの?なんかあったの?」



253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:48:07.05 ID:00ghteueO
「あのね…ハイジ、言いにくいんだけど…」

「じゃあ言わなくていいわ。これだけ……生きてはいるの…?」

クララは首を横に振った。


あぁ…本当に誰もいなくなってしまった。

クララ…あなたの存在ってなんて大きいの。

あなたがいなければ、どうなっていたか…。

でもあなたがいることで…………。


「ハイジ?」

「あ、なんでもないの!ご飯食べましょう」

二人は久しぶりに一緒に食事を取った。



254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:48:47.09 ID:00ghteueO
その夜昔のように一緒のベッドで寝た。

「狭くなったわね」

「本当にね」

自然と笑いあう。


「おやすみなさい、ハイジ」

「おやすみクララ……」

クララは先に寝入ってしまった。



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 12:49:48.05 ID:00ghteueO
クララ…あなたを見ると、フランクフルトでの日々を思い出すのよ。

そこからデーテおばさん、昔の家、疎まれた日々へと繋がってしまうの…。

あなたが悪いんじゃないってわかってるわ…。

それなのになんだか…全ての感情があなたに向かってしまうの。

なんでかしら。

私…やっぱりおかしいんだわ……。


ハイジはクララに背を向けて寝た。



259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:00:02.28 ID:00ghteueO
「ねぇハイジ」

何日かたったときにクララが話しかけた。

「なに?」

「アルムの山小屋に行ってみたら駄目かしら…?」

「行きたいの?」

「ええ、見てみたいわ」

「いいわよ。行きましょう」


こうしてあの思い出の小屋に旅立った。



260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:00:13.75 ID:00ghteueO
「冬の山は危険だからロープや食糧、暖かいコートを持ってくのよ」

「そうなの。普通は誰も行かないんでしょうね」

「そうよ。おじいさんも降りてたくらいですもの」


準備をし、出発した。



261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:00:55.37 ID:00ghteueO
ペーターの小屋が見えた。

更に登っていくと、見慣れたモミの木とあの小屋が見えた。


「まぁ、懐かしい」

クララが言った。

「私はここで歩けるようになったのよ」

「そうだったわね」

ハイジは言いながら思った。

私はここで嫌な気持ちがするようになったんだわ…クララ……クララ………。


ハイジはそう思うと衝動的に荷物にあったロープを手に持ち、クララの手を縛り上げた。



262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:01:43.27 ID:N5ZitEqZO

ついに……繋がった……


263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:02:55.48 ID:+18UWxdu0

ああ…ここで>>1


264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:03:06.12 ID:00ghteueO
「!?」

なにがおこったのか解らなかった。

「え…?」

あっと言う間に足も縛られる。


「ハイジ?ハイジなの!?」





「…そうよ」

背後で冷たい声がした。



265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:03:40.96 ID:00ghteueO
「ハイジ…どうして…?」
「わからないの…?」

ハイジの顔は狂気に満ちていた。


「わからないわ…どうして!友達だと思ってたのに!」

「あなたを見ていると私の醜い部分が出てくるの。よく褒められた私の純粋な部分が奪われてしまうのよ!」

「そんな…」

「それだけじゃないわ…いつの間にかあなたは私の周りの人達の関心を奪っていった。」



そんな風に思われていたのか…クララの根底にあるハイジへの信頼が揺れていた。



266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:05:34.70 ID:00ghteueO
「あなたが悪いのよ、クララ…」

「私から何もかも奪うんだもの…」


止めを刺すかのようにハイジは言った。


「私達…初めから会わなければよかったわね……」

「ハイジ…」

そんなこと言わないで…。
私はあなたが大好きなのに……。

「ふふふ…さようなら。馬鹿で意気地無しのクララ。あれは本音だったのよ。」

「ハイジ…待って!ハイジ―――――――――!!!!!!!」


扉の閉じる音がした。

クララは縛られて冬の山小屋に一人取り残されてしまった。



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:07:07.50 ID:00ghteueO
「ハイジ…ハイジ………」

自分はハイジを苦しめていた…。





本当は気づいていたわ。

気づかないふりをしていてごめんなさい…。

ハイジ…でも…私はあなたと仲良くしたいわ。

一緒に過ごすって約束したじゃない……針千本…飲ますわ…よ…………。



272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:08:48.46 ID:00ghteueO
これでよかったのだろうか…。
ハイジは自問する。


クララ…寒いだろうな…怖いだろうな…お腹すいてないかな…………。

こうすれば楽になれると思ったのに、思い浮かぶのはクララを気づかうものばかり。

クララ……………。


ハイジは立ち上がった。

そしてありったけの食糧とコートを持って、再び山小屋へと出かけた。



274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:10:27.28 ID:00ghteueO
ハイジ…ハイジ…もし来てくれるなら、今回は特別に許してあげるわ。

だから…お願い…。

私のこともそうだけど、あなたも苦しむわ…。


やり直せるわ…だから…早く来て…なんだか……私……眠く………………。



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:11:14.38 ID:00ghteueO
「クララ!」

クララを置いた場所に向かう。

「クララ………?」


クララは寝ているように見えた。

「クララ!ごめんなさい!もう二度としないわ!本当にごめんなさい!私…あなたが誰よりも大切よ!約束だって思い出したわ!クララ………」

クララは目を開けなかった。

ハイジは泣きながら全てのコートをクララに被せ、火をおこした。



283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:14:03.86 ID:00ghteueO
「モミの木さん…今までありがとう」

ハイジは穏やかな顔をしていた。


その後ハイジは小屋に戻り、いつものご飯を食べた。

その後暖炉にコートなどをくべ、火を消さなかった。



288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:16:40.14 ID:00ghteueO
ハイジはクララの亡骸とともに上に行き、わらのベッドに横たわった。

クララ…ごめんなさい。
私…なんでこんなこと…。

おじいさん…ごめんなさい。
私は…強く優しい子にはなれなかったわ。
おじいさんは…私にお父さんみたいになってほしかったのよね…?

私は誰に必要とされていたのかしら…。

クララ…?
ふふふ…今気づくなんて本当に馬鹿ね……。



290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:17:48.33 ID:00ghteueO
ハイジは隣のクララを抱き締めた。

「私馬鹿ね…あなたを憎んでたなんて。二人で生きていけばよかったんだわ…」

「でも…もう遅い…」

煙が上ってきた。

「よく眠れそうよ。ね、クララ」



292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:19:34.96 ID:00ghteueO
ハイジは死ぬ間際に気づいた。

自分は負の考えに支配されていたと。

いつからか過去の汚点ばかりを気にして自分を見失っていたこと…。

「ふふふ…おかしいわ」

まるで遊んでいるかのような言い方だった。


「ねぇクララ」

「人は死んでしまうとどうなるのかしら?」


ある日の会話が浮かんでくる。

「さぁ…天国に行くんじゃないかしら?」

「そう…じゃあみんな天国で幸せに暮らしているのかな?」

「そうね…きっとそうよ」




アルムの山小屋は二人と様々な思考を包んだまま燃え続けた。

おわり



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:20:29.13 ID:N5ZitEqZO
乙…、ハイジが不器用すぎる

296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:21:49.22 ID:pO/H/VrvO
全滅かよ・・・

298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:22:01.72 ID:/BkGNqirO
鬱だ死のう・・


299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:22:08.34 ID:R3AwOaL6O
うわわわわわああああああ!
乙!切なかった


303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:23:18.17 ID:iWlG6QW50
クララもハイジも誰も悪くない
悪いのは俺だ
そんな気分になった


304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:23:31.74 ID:aaAYrDs70

ハイジで鬱に…


305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:23:34.24 ID:RxXcuhpMO
乙!
おもしろかったぜ!

312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:26:24.77 ID:+18UWxdu0
ハイジ大好きなのはわからんでもないけど歪みすぎだろwwww
まあいまはゆっくり寝て下しい


313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:32:01.11 ID:00ghteueO
ありがとう!
なんか今ハイになってる。

寝たいけど眠れない…。
なんか質問ある?
あるなら寝るまで答えたいです。


315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:35:21.54 ID:aaAYrDs70
>>313

ユキちゃんは?

317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:37:45.71 ID:00ghteueO
>>315
ヤギは全部餓死or潰されました。
引越しについて行ったヤギは生きてます。
ユキちゃんは…潰されました…………。


319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 13:40:39.43 ID:aaAYrDs70
>>317
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁユキちゃんいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 14:58:22.90 ID:00ghteueO
みなさん本当にありがとうございました。
今から寝ますw
また会えたらいいですね。
起きてもまだあったら見てみます。

おやすみなさい………。


404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 20:56:57.67 ID:4G7AY5R50
俺も構想てきとーに練ってその内投下するか・・・

405 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 21:04:31.04 ID:00ghteueO
>>404
頑張れー!
なんか書くのは癖になりそうなくらい楽しかった!


423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 22:19:47.77 ID:4G7AY5R50
ロッテンマイヤーも本当は良い人なんだよな・・・w
むしろハイジのキャラに悪い人が居ない
心が洗われるよのう・・・

おk、適当にあらすじ立ててみた↓

とある国のとある山奥で、お爺さんと少女が仲睦まじく暮らしておりました…
少女は、何故人間は歳を取るのか?その疑問をお爺さんにぶつけました。
答えに困ったお爺さんは、「それは仕方の無い事」と教えておきました。
そして少女は「石仮面」と出会う……


427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 22:31:38.56 ID:4G7AY5R50
どうしても答えてくれないJIJIに対して怒りがこみ上げてきた
HIG(はいじ)は怒りに身を任せてヤギを殺した。
そのヤギの血がHIGの石仮面にかかる!
石仮面の秘密を知ったHIGはこれをつかえば何かわかるかも知れない
そう考え、石仮面を付けてヤギの血を吸わせるのだった・・・



439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:00:29.84 ID:4G7AY5R50
その日、JIJIは何者か分からない悪意を感じていた。
もしかしたらHIGが誰かに襲われているのではないか…そういった
不安が、彼を焦らせた。
「ただいま・・・おんじ・・・」
彼の焦りとは裏腹に、あっさりと帰ってきたHIGを見てJIJIは安堵した。
「ああ、おかえり」


440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:05:34.46 ID:4G7AY5R50
しかし、人知れぬ安堵は恐怖を揺るぎ無いものにした。
HIGは全身血まみれだったのだ。
「一体・・・どうしたんだね・・・」
問いかける言葉に返事はなかった。
ゆっくりと近づいてくるHIGに対し少しずつ後ずさりする。
山で鍛えられた自然の勘が訴えるのだ。HIGはもう人間ではないと



441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:13:05.19 ID:4G7AY5R50
HIGから流れ出る気は、最早人間の物ではない。
「おんじ……どうして逃げるの…?」
うつむき、薄ら笑いを浮かべながら尚近づいてくる。
どうにかして逃げる術を考えなければならない。しかし、どうしようもできない。
1歩ずつ、隅に追い詰められる。
「あたしが…おんじの大切なあたしが帰ってきたというのにィッ!!」



442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:19:31.14 ID:4G7AY5R50
一見ひ弱なHIGの拳で壁が壊された。
「最高ォーに良い気分だぞ…JIJIィイイ!」
圧倒されて何もできないJIJIは神に祈る事しかできなかった。
この子を何とかしなければ…そうは思っても、何もできない。
「腰が抜けて立てないか?JIJIィ…歳は取りたくないだろう?」
ニヤニヤと薄気味悪い笑いを浮かべて近寄るHIGの背後に、男の子の影を見た。



443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:26:40.20 ID:4G7AY5R50
「ハイジー!」
殺気立った顔のHIGが振り向くとそこにはペーターが居た。
「い、いかん!ペーター!こっちにきてはならん!」
勢いに任せてJIJIはHIGの横をすり抜け、ペーターを止める。
今度はこの子が危なくなるのだ。
「おじいさん!山の方に…山の方にヤギ達の死体が!」
「いいから…今は逃げるのじゃ!」
血にまみれたHIGから逃れる事で精一杯なのだ。



447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:36:12.87 ID:4G7AY5R50

20分、30分。それくらいは走り続けただろう。
HIGが追ってきていない。そう判断したJIJIは腰を下ろした。
「ペーターや。今見た物を全て忘れておくれ…」
悲しそうな顔で息を切らして、JIJIは続ける。
「もしあの子が石仮面を被ったのなら…わしは波紋法でハイジを殺さなきゃならん…」
どうしようもない怒りと悲しみの矛先は、明後日の方向へ投げかけられた。

449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:41:11.48 ID:4G7AY5R50

「そうだ…クララ!クララに頼めば…!!」
息を切らしてペーターが思い切り立ち上がる。
「ロッテンマイヤーさんが波紋法の授業をしてくれるって、手紙で!」
そういえば、そうだった。
クララが自分の足で立つ事が出来た後、そのような手紙をJIJIによこしていたのだ。
「急ごう…被害を最小限に止める為に……!」
そうして、JIJIとペーターはフランクフルトへ…友の元へ旅立った。

451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:49:18.62 ID:4G7AY5R50
自分でも無茶苦茶な設定に絶望してきた
足場がねぇwwww

「お嬢様…10分間息を吐き続けて10分間息を吸い続けて下さい。そうしたらマスクを取りましょう。」
フランクフルトのぜーゼマン邸では、クララが黙々と修行を続けていた。
「コォォォオオオオオ……」
自分の足で立てるようになったあの日から、ロッテンマイヤーの厳しい修行が始まったのだ。
もっと体力を付ければ、きっとハイジやペーターと遊べる。
彼女が考えるのはそればかりだった。



452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/03(金) 23:55:04.34 ID:4G7AY5R50
軽いノック音が聞こえ、執事の一人が入ってきた。
「お嬢様、そのまま続けていてください…」
ロッテンマイヤーと執事の会話に耳を傾けようともせずに呼吸を続けたが
そのロッテンマイヤー自身の金切り声に、呼吸が乱れた。
「な、なんという事……」
力なく萎れてその場に座り込んだ彼女に、クララは一声尋ねた。
「何があったんですか?」



453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:00:35.37 ID:ihjoT4MN0
答えを聞く間もなく、JIJIとペーターが入ってくる。
「あら、ペーター、おじいさん。いらっしゃい。」
呼吸矯正マスクを付けて挨拶をされ少し戸惑ったが
休む間もなく事の経緯を伝えた。
クララは少し考え、何も言わず冷静にJIJIの波紋法を特訓し始めた。



454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:04:01.62 ID:ihjoT4MN0
IDにjoがついてるのは運命だろうか

あの悪夢から、一ヶ月の時が過ぎた。
クララやロッテンマイヤーが見守る中、一人過酷な特訓に耐えるJIJI。
そして、それを見るペーター!
彼らは帰ってきたのだ…悪夢の始まりの場所へ!
「HIG……お前の野望はわしが止めるよ…」



456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:10:58.18 ID:ihjoT4MN0

太陽が落ち、夕闇に紛れる頃彼らは帰ってきた。
普段ならば夕食を作って遊びつかれたハイジと共に食べる時間だ。
「我々の旅は…」
「ついに終点を迎えた……ッ!!」
冷や汗と恐怖を感じながらも、雄雄しく1歩ずつ山小屋に近寄っていく。
HIGを助ける為に…!

457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:15:41.08 ID:ihjoT4MN0
ロッテンマイヤーがドアを蹴り開ける。
暖炉は焚かれておらず、温度も乗じて寒気が全員を襲った。
「おじいさん…ハイジ、留守みたいだよ……?」
ペーターがJIJIの背後に隠れて小さな声で伝える。
そんな訳がない。JIJIがHIGならこの小屋を拠点とするからだ!
「お…おじいさん!!後ろッ!ドアから離れて!」
クララがいきなり叫びだした。



458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:20:32.05 ID:ihjoT4MN0
ドア上方から手が伸びる。
それにいち早く気づいたペーターがJIJIを押しのけた。
「ペェェェェェタァァァァァァァ!」
彼の胴体とくっついていた頭は伸びた手によってもぎ取られ
無残にも吹き飛ばされた。
「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!」
ドアの上に張り付いていたのだろうHIGが奇声を上げて姿を見せた…



459 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:27:37.22 ID:ihjoT4MN0
「ペーター、クララ、ロッテンマイヤーさん。そしてJIJIィイイ!!久しぶりだねぇ…」
相変わらず不敵な微笑みを見せたままのHIG。
JIJIはもう「これ」がハイジだと思う事を止めた。
ペーターと、そしてハイジのために。
「恥ずべき事だがこのおんじ…恨みを晴らす為だけに!HIG!貴様を殺す!」



460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:33:47.31 ID:ihjoT4MN0
猛然と進んでいく彼をクララが止めた。
「恨みを晴らす権利なら…私にもありますわ!」
波紋法の呼吸に音が混じる
「コォォォオオオオ…」
ゆっくりとした蹴りのような構えでクララが飛ぶ!!
「そんな眠っちまいそうなのろい動きでこのHIGが倒せるかァ―!」



461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:38:16.77 ID:ihjoT4MN0
>>1、多分次で名言借りるかも・・・w

「WOOOOORYYAAAAA!」
奇声と共にHIGがクララの足に両手を放った瞬間!
クララは両足を開き、腕の自由を奪った!!
「かかったわね…」
彼女はそのまま両の手刀を×字に組んでHIGの頭に襲い掛かる
「稲妻十字空烈刀!!」



463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:44:45.64 ID:ihjoT4MN0
「無駄無駄無駄無駄ァ!」
クララの体が凍りつき、HIGは尚もニヤニヤと笑っている。
「ちょっとでも敵うと思ったの?クララ?」
一言だけ発すると凍りついたクララの華奢な体を
HIG自身のその拳で打ち砕いた。
「そんな不埒な事少しでも考える…あなたが悪いのよ、クララ……」



464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 00:51:18.84 ID:ihjoT4MN0
「JIJI…さっきのさっきまでおじいさんを手に掛けたくなかったわ…」
粉々となったクララの破片を踏み潰し、1歩ずつ歩み寄る。
一歩ずつの距離の縮まりに恐怖すら覚えるが呼吸は乱れない。
「おじいさん、北風はバイキングを作るんですのよ」
クララの一言を胸に秘め、JIJIは波紋を練った。
ロッテンマイヤーが部屋の隅から斧を持ってくる。これなら凍らない…



467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:00:05.57 ID:ihjoT4MN0
「JIJI…貴方にLuck!…そしてPluck!」
斧を受け取ったJIJIは早速振り上げるがHIGは言葉を繋げる。
「今!躊躇いもなく貴様を惨殺処刑にするからね!」
HIGの言葉の途中で疲れてJIJIは斧を振り下ろしていた



468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:06:47.85 ID:ihjoT4MN0
斧はそのまま真直ぐHIGを2つに分けた。
「た、倒した……っ!?」
ロッテンマイヤーがあっけなさ過ぎると言わんばかりに
声を漏らした。
「ちがうよ……まだ、生きてる!」
半分となったHIGの片方が喋った。驚きだ。



469 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:10:49.25 ID:ihjoT4MN0
不意を突かれて首にHIGの指が刺さる。
「ねぇ、どうして?どうしておじいさんは私を殺そうとするの?」
「どうして、歳を取らなくちゃいけないの…?」
頚動脈を撫でてHIGはJIJIに質問する。
「それは……しょうがない事なんだよ…」



470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:16:04.91 ID:ihjoT4MN0
「最後に1回だけ…煙草を吸わせておくれ」
唐突なJIJIの願いにHIGは頷いた。
1歩だけHIGは下がり
JIJIはその場でマッチを擦ってパイプをふかせた。
「ねぇ、さっきの質問の答えは?」
HIGは最後の質問をした。



471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:20:56.21 ID:ihjoT4MN0
右手を背後に隠し、擦ったマッチではめていた軍手に火を着ける
「それはね………誰にも分からない事なんだよ」
燃えた右手と左手を重ねて瞬時にHIGに殴りかかる。
諦めたように呆然と立つHIGは避けようともせずに一言発した。
「ありがとう……おじいさん…」



472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:24:41.77 ID:ihjoT4MN0
「山吹色の波紋疾走!」
年甲斐もなくJIJIは叫ぶ。
繰り出した両手はHIGの胸部を貫いた。
吹っ飛ばされるHIG。闇でぼやける程度に離れた後に自らの首を切った。
「今回は私の負けね…でも、ロッテンマイヤーさんの体があれば…」

― 一部完 ―



475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:27:50.88 ID:ihjoT4MN0
これで3部とか作ったらどうしようw
おじいさん子供いねぇwwww


478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 01:30:58.27 ID:0n1eM4sd0
あなたはおJIJIの壮絶な過去を知らないのか・・・


518 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 13:44:53.95 ID:ihjoT4MN0
我々はこの老人を知っている!
いや、この優しい目と落ち着いた物腰を知っている!
「お久しぶりです、ゼーゼマンさん。商いの方は益々順調だとか…」
あの伝説の戦いを生き抜いた男がフランクフルトへ帰って来たのだ。
「いや、大した事はない。それにしても羨ましいですな、波紋法の生命エネルギーは。」
軽い社交辞令を交わし合い、一区切りをつけた所でゼーゼマンが案内する。
「では、行きましょう。」



520 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 13:56:01.74 ID:ihjoT4MN0
ペーター・クララの死から49ヶ月…
JIJIはゼーゼマンから1通の手紙を受け取っていた。
「近頃フランクフルト中心部の地下から、不穏な気配がする」との事だった。
幾度かにわたって差し向けた調査員から、恐るべき物を発見した…と。
そこに「興奮」の二文字は無く、あるのは「恐怖」だった。
「この洞窟には、石仮面の名残があるのです…!」



522 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 14:04:33.20 ID:ihjoT4MN0
洞窟を見回すと、確かに。納得できる程の石仮面が彫られている。
わしは石仮面との因縁から逃れる事はできないのか……
頭の隅で彼は考え、少し険しい表情になった。
「…そして、さらにこの奥にあるもの……貴方はそれを見た瞬間
 貴方の背筋には絶対に身の毛のよだつような恐怖が疼き上げるでしょう…」
静かに、ゼーゼマンは続けた。
「4年前、HIGとの戦いで体験した…あのドス黒い気分以上の疼きを!」



523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 14:11:36.95 ID:ihjoT4MN0
「な、なんじゃ…この柱に『あるもの』は……!!」
JIJIは眼を見開いて驚いた。
その柱に「あるもの」とは、どこかで見た事のある老婆だったのだ。
「い…石仮面がこんなに沢山…!それに、この柱についている老婆はいったい…
 …なんなんだ?」
恐れを抱きながらもゼーゼマンは一言説明する
「この顔は……4年前に死んだペーター君にどこか…似ているのです」



524 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 14:21:50.42 ID:ihjoT4MN0
待 た せ た な ! !
JIJIは奇妙な旅にでるそうです(仮)第2部…幕開けだ!
一覧
ペーター・惨死 クララ・凍死 ロッテンマイヤー・行方不明
HIG・頭部のみ行方不明 

「そしてさらに!アミノ酸がある!細胞がある!微妙ながら体温もある!脈もある!
 ……生きているんじゃ、この老婆は!」
その場に居た全員がゼーゼマンの一言で凍りついた。
恐ろしい。HIGなど眼中にすらならなくなるこの存在感。
凍り付いている彼らを置いて行くかのようにゼーゼマンが場を繋ぐ。
「JIJI、貴方を呼んだ理由はただひとつ…
 この老婆が眠っている内に貴方の『波紋法』でこいつを完全に破壊していただきたい!」


526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 14:41:21.45 ID:ihjoT4MN0
「…ところでJIJI。私の隠し子は元気かね?」
不意にゼーゼマンが表情を変えて尋ねてくる。
柱の老婆の強烈なインパクトに気圧されていたJIJIは軽くしか返せなかった。
「…何故、今そのような話を?」
確かにゼーゼマンには隠し子が居る。
ジジという名の息子が…



527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 14:54:10.52 ID:ihjoT4MN0
黒猫のような艶やかな黒い髪で、本来ならクララの弟になっていたのだろう。
彼だけにはHIGのように間違えずに生かそうとおんじも一生懸命育てた。
「そう、君が死んだら当然悲しみ、怒り、私に恨みを抱くだろうな。」
ゼーゼマンは鋭い眼光になり自分の調査員すら一瞬の内に殺した。
「波紋…!」
殺気を感じたおんじは両手を上げて守ろうと必死になった。
しかし、ゼーゼマンには余裕すら伺える薄笑いを浮かべておんじを蹴り飛ばす。
「ロッテンマイヤーに波紋を教えたのはこの私ィ!師と弟子で力量が同じだと思うな!」



528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 15:08:14.82 ID:ihjoT4MN0
ストレイツォ役を間違えたな\(^o^)/
JIJI2世とかwww1世のみにすればよかったwwww

「血迷ったか……」
力なくおんじが声を漏らす。
眼の端で見下され、あまつさえ1撃でこの様となると死に切れない。
「これから私は貴様の血で不死を手に入れる!」
おんじの血を仮面にべっとりとつけて吸わせる。
HIGの二の舞になる事があろうとは、思いもよらなかった。
「WWWWRRRRYYYYYYYAAAAA!」
奇声という産声を上げた瞬間だった。



529 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 15:32:19.71 ID:ihjoT4MN0
スマナス、7時くらいまで少し離脱する

アルムの町で、JIJIはおんじの日記を読んでいた。
過去に何があったのか。尋ねても何も教えてはくれないからだ。
そして、自分の部屋にある少女の服。
これらを説明付ける為には何かあると思っていたからだ。
季節は冬に差し掛かっていた。
おんじの帰りを今か今かと待つ姿は、どこかHIGを思わせる。
夕暮れになり、ふと窓の外を見ると…そこには、若返ったぜーゼマンの姿があった。



534 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 18:53:21.22 ID:ihjoT4MN0

「おじさん……だぁれ?こんなに寒いのに息が白くないのはどうして?」
窓越しに恐る恐る尋ねる。
男は無言のまま立ち尽くす。答える気は無いらしい。
「それに今牙みたいな物が見えたような見えてないような……」
問い続ける。無言のまま睨み合うが、一触即発の空気は変わらない。
痺れを切らせたJIJIは声のトーンを落として言う
「とぼけんなこの野郎」


536 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 19:41:52.05 ID:ihjoT4MN0
おんじの日記には、死を覚悟したような文体が残っていた。
そして、JIJI自身も確信したのだ。
おんじはこの日記をJIJIが読む事をわかっていたと。
そして貧乏ながらに彼の為に買って置いた物もある事。
狩猟用の猟銃だ。
「待ってたぜ…ゼーゼマン……おんじの仇!宣戦布告だ!」
4年以上前までは笑い声に満たされていたこの小屋に、銃声が轟いた。



537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 19:54:42.98 ID:ihjoT4MN0

火薬の匂いと乾いた音を残して小屋を出る。
思った以上に寒い。寝巻き姿で冬手前の外に出る事になって少し後悔した。
雪の上の血を辿りゼーゼマンを見つける。
普通の人間では、胸部を打ち抜かれたら確実に死ぬだろう。
しかし、ゼーゼマンは難なくゆっくりと立ち上がる。
彼はもう、吸血鬼なのだ。
「HIGの…HIGの失敗は、その謎に対する好奇心!
 そこに隙が生まれ、おんじに敗北した…だが!このゼーゼマンは違う!」
興奮のあまり声が大きくなっているゼーゼマンから眼を離す事はなかった。


538 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 20:23:30.85 ID:ihjoT4MN0
「ゼーゼマン、容赦せん!」
物凄く高揚しているゼーゼマンを見つめ、雪の中に咄嗟に仕込んだ
猟銃の標準を合わせる。急がなくては凍死してしまう。
何より寒さは思考と気力を奪う。話を聞く事すら寝巻き姿の彼には面倒なのだ。
「そして私が最初に使うのは…高圧で眼から体液を発射する。
 名づけて、空裂眼刺驚!」
ゼーゼマンの眼から異様な物体が発射された。



539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 20:41:16.53 ID:ihjoT4MN0
図らずとも、足から勝手に力が抜けていく。
JIJIはその場に倒れ、ゼーゼマンの攻撃を頬を掠める程度で避けられた。
この寒さで体力勝負は不利なのだ。
「お前は次に……『何ッ!!』と言う」
力なく伝える。風で少し届いたかどうか不安だが関係ない。
銃口を少しだけ雪から覗かせ、指に力を込める
「何ッ!!……はっ!!」
二つの事に気付けたのはいいが、遅かった。
2回目の銃声はアルムの山の彼方へと消えていった。



541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 21:18:55.14 ID:ihjoT4MN0

猟銃から放たれた2発目の弾丸はぜーゼマンの首と胴体を分けた。
未だJIJIは、ゼーゼマンが自分の親であるとは知らずに息の根を止めようと近寄る。
「JIJI…私は後悔していない。
 醜く老いさらばえるよりも一時でも若返ったこの充実感を持って地獄へ行きたい…
 若返った事は私にとって至上の幸福だったぞ!我が息子よ!」
波紋の呼吸音が聞こえ、ゼーゼマンの体が崩壊していく。
いきなりで、しかも一言だけの子に向ける言葉にJIJIは驚愕した。


542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 21:30:47.97 ID:ihjoT4MN0
「父……上…?」
戸惑いの余り声が震えた。
砂と化したゼーゼマンの体を見て、思い出すのはおんじだった。
実父との思い出がないJIJIにとって、彼の父はおんじなのだ。
「波紋法無しで吸血鬼に勝てるなんて…大したものですわ」
ふと後ろから声がした。
誰だろう。知らない声だ。寒さからか視界がぼやけて耳も遠くなる。
「私の名前は、……マ……」
そこでJIJIの意識は白紙となった。



543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 21:45:29.73 ID:ihjoT4MN0
JIJIが次に目覚めた時はベッドの上で空を眺めていた。
何時間寝たのだろうか、窓の外は明るかった。
「あら、お気づきになられたかしら」
声のする方を視界に入れて初めてわかった。どうやら育ちがしっかりしていて
なかなかキツ目なのだと思われる大人の女性だ。
「ありがとうございます。看病してくれたのですか?えーっと…」
「マイですわ。以後、お見知りおきを」
この礼儀正しさは、普段からしていないと身につかない物。
しかし、JIJIにはそんな事どうでもよかった。先ほどから呼吸が苦しいのだ。
眼を落として口元を見ると、何やら不気味なマスクをつけられていた。



544 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 21:57:19.00 ID:ihjoT4MN0
「これから貴方にはその呼吸法矯正マスクを付けて生活して頂きます。」
何もかもJIJIには訳がわからなかった。
それに、彼が今するべき事は…
「フランクフルトへ……!おじいさんが!」
ゼーゼマンの事を考えてしまうと気持ちばかりが急く。
彼にとってたった一人の家族なのだから。
「おじいさんなら無事ですわ。ゼーゼマン商社に監禁されていますが。
 『柱の老婆』の事で…まだ、生かされているのでしょうね。」
全てにおいて彼女はきっちりとした回答を与えてくれた。
JIJIにとっての、2人目の先生に思えた瞬間だった。



548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 22:13:34.63 ID:ihjoT4MN0
一方、フランクフルトでは不穏な動きが見られはじめた。
ゼーゼマン邸では執事やメイドの募集が多くかけられ
行方不明者が続出する。とのことだった。
人々の間では、ゼーゼマン商社が雇った人々を奴隷として売っているのでは…
という黒い噂すら流れはじめていた。
その実、ゼーゼマン邸では『柱の老婆』に関する研究を毎日続けていたのだ。
それらを全て仕切っていた人物は、おんじも良く知る者だった。
「奥様……アルムのおんじが、どうやら意識を取り戻したようです…」



551 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 22:23:22.99 ID:ihjoT4MN0
「そう、それはよかったわ。」
ガラス越しに『柱の老婆』を見据えて、ようやくかと言わんばかりに立ち上がる。
ゼーゼマン夫妻その人だった。
執事の一人と共にゼーゼマン夫妻がおんじの部屋へ入る。
そこには、ベッドに横たわり拘束衣を付けられていたおんじが不機嫌そうにしていた。
「先ほど、脱走を試みようとしていましたので捕らえて拘束衣を付けております。」
何も言わずとも先に説明する執事を置いて、夫妻はおんじに尋ねる。
「おじいさん…貴方は逃げ出したい程に危険な秘密を知っているようですね……
 あの老婆について…っ!!」



553 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 22:41:59.83 ID:ihjoT4MN0

「神よ!なぜこんなことに!私はなぜ死ななかったのか!?
 なぜ!私を生かしておいたのかッ!!」
おんじの悲痛な叫びが部屋に響く。HIGの事、JIJIの事。
それら全てを案じ、叫んだのだ。
「違いますわ、おじいさん。このゼーゼマン夫妻が貴方を生かしたのです。
そして、私共のゼーゼマン商社が貴方に喋らせたのです。」
夫妻はなだめるように言うが、その実恐怖を帯びた内容である。
言葉の途中で執事が注射器を持ってくる。
「貴方は老いているとはいえ、その体でかのHIGを倒した男…
 簡単には口を割らない事は分かっています。ですが…
 私共ゼーゼマン商会は世界一ィ!できない事はありませんわぁぁぁああ!」
狂気を帯びた彼女の眼は、おんじを見下していた。


554 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 22:54:32.08 ID:ihjoT4MN0
「さぁ!全てを喋って頂きますわ!過去に何があったか?
 HIGの事、そして夫の事、おじいさん自身の事!」
『あ の 柱 の 老 婆 を 目 覚 め さ せ る 為 に !』
興奮の余り息切れを起こしているのだろう、小さい肩が上下している。
何故わからないのだろうか。あんな恐ろしい物を目覚めさせる事がどれだけ
危険なのかを。
「や、やめろ。貴方は何もわかっていない!戦争は関係ない!
 全世界が危険になるのじゃ!」
同じくらい張り合わないと聞こえないのかも知れない。そう思ったおんじは
怒りの全てを夫妻に向けて怒鳴った。
その怒鳴りもまた空しく、夫妻の心には届かなかった。
「『柱の老婆』に生き血を吸わせる実験の準備を。万全を期してください。」
彼女はその一言を執事に言いつけて部屋から出て行った。



558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 23:05:26.67 ID:ihjoT4MN0

その頃JIJIとマイは、波紋の一段階を終えていた。
それなりに波紋が練れ、それなりに使いこなせる。基礎が固まってきた。
ゼーゼマンの息子だったという事実もあるのか、飲み込みが早い。
「マイ先生、では行って来ます。」
そう、一段落ついたらおんじを真っ先に助けに行こう。
波紋がなければ無力だから。と悔しくも考えていた。
「今の貴方なら、100Km走っても呼吸は乱れませんわ。行ってらっしゃい。」
最低限必要な物を揃え、JIJIは一人フランクフルトを目指す。


559 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 23:25:54.94 ID:ihjoT4MN0
ゼーゼマン邸地下では人知れず実験は始まっていた。
そう、まさに「行方不明者」や「多量の求人」は全て『柱の老婆』の為であった。
夫妻は今でこそ罪の意識はないが、それは『柱の老婆』と出会ってから
日々着実に変わっていった。
「奥様!『柱』にヒビが入りました!」
段々と『柱の老婆』が現世に解き放たれようとされている。
おんじは今までの事に対し責任を、そしてこれからの事に対し恐怖を感じていた。
「おじいさん…何を怖がっているのです?
 動物園の檻の中の灰色熊を怖がる子供がいますか?そんなのどこにもいませんわ!」
富と栄誉に眼が眩み、自分の富に過信をしているのだろうとおんじは思った。
しかし、そんな中で遂に『柱』が崩れだす。



561 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/04(土) 23:56:26.66 ID:ihjoT4MN0
そろそろチネッテ出そうか。チネッテ。
おばあさん倒した後に。
読み直してみると何か色々と誤解してたかもしれんwww
でもこのままいっちゃうか

「み、見てください…石のような肌だったのがつやつやと光沢と血色がついていきます!
 生き物です!人間と変わりない生き物です!」
研究員が慌しく叫ぶ。唖然とする皆を横目に夫妻は一人微笑みを浮かべていた。
「ふふふ…名前が欲しいですわね。『柱の老婆』じゃいまいち呼びにくい…
 そうですね…「おばあさん」というのはどうでしょう?」
一人だけ呑気に名前を付け始める。これこそ、余裕という物なのだろうか。
しかし、おんじには恐怖が拭い切れなかった。
「さ、例の実験をはじめて下さい。隣の部屋から…よろしいですわね?」
夫妻が執事に命令する。一体何が始まろうというのか。
ガラス越しに見続けていると、壁が開いた。その奥に居たのは…
「ヨ…ヨハンさん……」



562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 00:07:12.91 ID:vrAWmh4/0
ゼーゼマン邸の御者をやっているはずのヨハンだったのだ。
あの人は、あまり強気な方ではないはず……
考えを巡らせて行く内に、一つの真相に辿り付く。
「ま、まさかヨハンさんに石仮面をッ!?」
衝撃のあまり声が大きくなってしまった。
しかし、夫妻は動じる事なく何をいまさら、と言わんばかりに
ちらりと視線を移して
「そうです。今日は1滴も与えてませんから血に飢えていますわ。」
それだけ説明すると、すぐにまた視線をガラスの向こうへ戻す。
やや臆病なヨハンさんが……
「WRYYYYYYYYYYYYYY!」
悪夢はまだ、終わらないようだ。



563 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 00:26:16.49 ID:vrAWmh4/0
ヨハンは目の前に居るおばあさんに……
いや、血に反応した。どうやらもう人間としての尊厳はないようだ。
「なんという事を……」
恐ろしい化け物ショーとして見ているかのような夫妻達を呪った。
おばあさんは動く気配すら見せず、ヨハンに両腕で掴まれ血を吸われそうになっていた。
逃げようともしないのは、やはり普通の人間だったのか……?
否!
ヨハンがおばあさんに触れて数秒立った頃、ヨハンの体に異変が現れた。
「あ…顎が!!それに腕も…!」
触れていた顎と腕はお婆さんに取り込まれたかのように消える。
その不思議且つ不気味な光景を目の当たりにした。
「AGOGAAAHHHHHH!!」
ヨハンの体からパーツの殆どが奪われている……。
おばあさんはそのまま抱きかかえるようにヨハンの体を引き寄せて取り込む。
「お、おばあさんは一体化して取り込んでる……食べているのです!!」

------------------------------ここまでの記録をセーブしますか?------------------------
 はい
 いいえ



568 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 00:39:45.06 ID:BRQzcQhi0
実はペーターにも隠し子が・・・何でもないです。


570 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 00:41:40.29 ID:vrAWmh4/0
ペーターつえぇwwww
まぁいいさ。どうせペーターは3部復活予定w
「そしてそれを見るペーター!!」
この下りがやりたかった何て言えない


577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 01:12:43.37 ID:vrAWmh4/0


波       紋        疾        走
---------------ゆっくりペースで再開------------------

走り続けた末、ようやくJIJIはフランクフルトへ着いた。
しかし、着いたのはいいのだがゼーゼマン邸に入る事ができないのだ。
真正面から話しかけても、裏門から入ろうとしても……
途方に暮れた頃、ようやく一筋の希望が現れる。
「ゼーゼマン邸で大人数の執事・メイドの募集をしている」と…
こんな事もあろうかと、HIGの服を一着失敬していたのだ。
「こんにちは…」
なるべく、不審に思われぬように丁寧な言葉・挨拶で門番に話しかける。
ここで一番大事なのは、相手に何も言わせない…畳み掛ける事だ。
「メイドの募集をしてると聞きまして伺ったのですが…」
門番達は何故か一歩ずつ後ずさりしている。
一つずつ歩み寄るにつれて門番も一歩、また一歩と下がる。
「ふ…不審な奴…!」
門番から出る言葉はJIJIにとって意外だった。


578 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 01:26:23.19 ID:vrAWmh4/0
ヨーゼフとジョセフのスペルが一緒だった件(Joseph)
ヨーゼフ・ジョースター…どうよ?

「え…な、何でですか?ただ私はメイドとして……」
面接に来た者を会うなり『不審者』扱いは勘に触る。
それすらも耐えて微笑み続けられるのはおんじの為なのだろう。
「そんなムキムキなメイドがいるか!!」
そういえば、波紋法を習得している時に物凄い修練を積んだ…
そんな気がした。いや、事実想像を絶するような修練を積んだのだから。
「まぁまぁ…そんな固い事言うなよ」
門番の肩に馴れ馴れしく手を置き、波紋を流す。
売っているような睡眠薬とは違ってすぐに眠ってくれる。
「ちくしょう…今度はコレの服だけど……バレないよな…?」
誰かが来る前に着替えを済まし、邸内に侵入する事にした。



581 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 01:49:42.40 ID:vrAWmh4/0
しかしヨーゼフには犬としてイギーのポストが……!!
こればっかりは譲れそうに無い

「ほ、ほんの数秒でした……あのおばあさんは!
 この密室から壁等に損傷を与えずこつ然と消えてしまったのです!!」
ガラスの向こう側では、誰一人として居ない。静まり返っている。
しかし、こちら側では、皆が皆冷や汗を流して重たい空気に耐えている。
夫婦もようやく事の重大さが分かってきたのだろう。手が震えている。
「落ち着いて探しなさい!かならず……かならずどこかに潜んでいます!
 映写フィルムはまだですか!?」
先ほどとは違い年甲斐も無くヒステリックな声になっている。
そして、このおんじは恐怖のあまり声が出ないのだ。
「た、ただ今現像が完了しました!」
急いだ様子で執事の一人がその手にフィルムを抱えて入ってくる。
「映写…映写してください!」


582 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 02:00:05.93 ID:vrAWmh4/0

「こ、これは……!」
おばあさんは天井についている排気口の蓋を開け、その中に入っていった。
恐怖に飲み込まれそうな空気の中、注意を呼びかけるように放った。
「す、すると…今どの部屋に居たとしても
 排気口の近くにはおばあさんがいる可能性がある!」
危険…過ぎるのだ。
数秒でも触れさえすれば、取り込まれる。恐怖は段々と現実化される。
「そ、そこの貴方!排気口の近くに立たな……ッ!!」
一瞬の内にその執事の中にお婆さんが入り込んだ。
入り込む事も、取り込む事もできるのだ。
「おばあさんよ!!おばあさんがあの執事の中に!!」


583 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 02:39:36.73 ID:vrAWmh4/0
実は昨日から風邪引いて鼻+咽痛かったりする
このスレは作者の体調を不良にする魔法でもあるのだろうか

夫妻の一言で執事に大勢の鉛の弾が飛ばされる。
とはいえ、仲間だった人物に対して銃を撃つなんて
想像がつかないだろう。しかし…
「貴方たちかい、私の眠りを妨げるのは……」
彼の中から声がする。弾丸すらものともしない。
HIGやゼーゼマンを彷彿とさせる。
落ち着いた初老の執事だった彼の口からはもう
彼自身の言葉は発せないのだろう。



588 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 03:04:10.43 ID:vrAWmh4/0
前半と後半で分けた方がいいのか両方で見たほうがいいのか。
いずれにしてもやり切れないという突っ込みしかできんw
つまり俺が書き終えて誰かが始めればよくなるのだな!!

彼は人差し指を1人へ向けた。その人差し指から彼の「皮膚」が剥がれ落ちて
老婆の手が見えてきた。
そのまま銃の真似事のように続けるのかと思いきや、指から弾丸が飛び出した。
そう、撃ち込んだ弾丸を撃ち返して来たのだ。
「おい、じいさん。こっちに来て身を隠して!」
執事の中の一人がおんじの拘束衣を掴んで寄せる。
かなり荒いとは思うが、今はそういう事を言っている場合ではない。
「い、いい!お前達の助けなんぞ借りん!」
意地を張ってみせるが、それも叶わない。
この青年の雰囲気からはどこかしら懐かしい物を感じさせた。
「やれやれ、こんな時まで…困ったおじいさんだ。」


589 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 03:25:32.99 ID:vrAWmh4/0

「……髪の毛、拝借しますね。」
そういって青年は夫妻の髪の毛を強引に引き抜く。
パニックになっている夫妻には痛みすら感じさせなかった。
「コォォォオオオ…」
波紋を練ると変装の為に固めていた髪が元通りになる。
その正体こそ、おんじにとってもっとも来て欲しくない人物だった。
「JIJI!!な、なぜお前が…!」
JIJIとおんじの再会など関係無しに老婆は弾丸を放ってくる。
避けようともせず、ただ波紋を髪の毛に伝える。
「防御だよ、防御。」
波紋を伝えた髪の毛を空中にハラリと舞わせると、弾丸が跳ねて行く。
この子は波紋を覚えたのだ!

------------------ここまでのデータをセーブしますか?-------------------

 はい
 いいえ


590 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 03:29:42.43 ID:BRQzcQhi0
はい
そしてゆっくり寝るべし


604 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 12:55:13.25 ID:vrAWmh4/0
皆早起きよのう…
ああ、そうか。俺がダメ人間なだけか。

------------セーブしたところから始めますか?-----------
 はい
 いいえ


606 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 13:36:35.14 ID:vrAWmh4/0
なんかいつの間にか皆三点リーダの虜だなwww
では……はじめようか…
一覧
ハイジ・頭部のみ行方不明 ロッテンマイヤー・行方不明
ペーター・惨死。後に埋葬 クララ・凍死 ゼーゼマン・JIJIの手により死亡
夫妻・一部のみ脱毛

なんという超魔術だろう。自分もできる事なのだが、この短期間で
ここまで波紋を使いこなす事ができるとは。おんじは恐ろしく思った。
ロッテンマイヤーとクララの地獄の特訓を乗り越えたおんじすら
JIJIの波紋力には足元には及ばないだろう。
「奴を外に出してはならん!JIJIよ、波紋でその老婆を倒すのだ!」
青ざめたおんじが早く何とかしてくれ。と言っているようにも思えた。
夫妻の方にちらっと眼をやると、まだパニックに陥っていた。
「結局、悪い人なの?このおばあちゃん。」
余裕を持っているのか、ただ呑気なのか。
敵とみなしていないようなその一言におんじはため息をついた。



609 名前:JIJI 投稿日:2008/10/05(日) 14:09:05.36 ID:vrAWmh4/0

「別の生命体っていうより、普通のお婆さんにしか見えないけどなぁ…」
年寄りを労わりなさいと教えていた事が仇となったか。JIJIは
攻撃する様子すら見せない。
もし彼が何も知らずに普通の老婆を倒してしまったとあらば、後悔が残る。
しかし、普通の老婆ではないのだ。
「お婆さん、ほら、杖とかいるでしょう?」
夫妻の杖を奪い取るかのように素早く取って差し出した。
敵であるはずの老婆にまで気を遣う……何と優しい子か。
見ることしかできないおんじは嬉しさと焦りで複雑な気分にされていた。
老婆は無言のまま周りを見渡し続ける。JIJIには関心がないみたいだ。
聞こえてないのかな?と勘違いをした彼は、夫妻の杖を握らせようとしたが
手がすり抜けたのだ……!
「おや……私の体に吸収されないなんて、どうした事かね…」


610 名前:JIJI 投稿日:2008/10/05(日) 14:24:45.14 ID:vrAWmh4/0
このペースじゃ2部終わる気がしねぇw
細かい所飛ばすわ、お婆さん含めて後4人いるし。

JIJIの体が吸収されない事に疑問を感じたのか、老婆は夫妻に1歩ずつ
近寄っていった。パニック状態だった夫妻は放心している。
そのまま夫妻の髪を指でがっしりと掴むと老婆に吸収された。
「なるほど…やはり、あの青年だけ特別な訳ですか」
夫妻は目の前に老婆が居る事に気付き金切り声にも似た悲鳴を発し
抜けた腰を引きずるように素早く後ろに下がった。
「お婆ちゃん…!」
ゼーゼマンが父だと知った今、彼にとって夫妻は叔母にあたる。
闘志を揺り起こすには十分だった。
「おおおぉぉぉぉ!お婆ちゃんを離せッ!!」
波紋を込めた右ストレートは見事な程みぞおちに入った。



611 名前:JIJI 投稿日:2008/10/05(日) 15:02:36.74 ID:vrAWmh4/0
「は…波紋が……!体表から滑り落ちて下の血に反応している!!」
地面を濡らしている執事や研究員達の血が波紋に反応した。
表面からの波紋は通らない。内部からしかないのだろうか……。
先ほどの研究から、吸血鬼の上位種のように感じていたJIJIは
太陽の光を浴びせられれば……と、手段をいくつも考えていた。
「やはり、この青年と私の体は…反撥し合う…」
老婆が一人事のようにブツブツと呟く。これ程までに余裕が持てるのか。
死なないというのはそれ程までに冷静にさせるのか。
JIJIにとっては、どこから波紋を流すか。
そしてこの老婆にとっては、お話にならないと言わずとも態度でわかった。
そんな微妙な空気の中で彼らは戦っている。
老婆は試すかのような力加減でJIJIに右ストレートをお返しした。
中々義理堅い人のようだ。
「ぐ……ぁッ!!」
直撃を受けてJIJIの体が意識と共に吹き飛ぶ。



612 名前:JIJI 投稿日:2008/10/05(日) 15:31:47.31 ID:vrAWmh4/0
「呼吸か血液でできるエネルギー……気絶していればただの人間ですね…」
壁にぶつかって地面に叩きつけられたJIJIに近づいていく。
助けに行きたくとも拘束衣に縛られ助けられない自分の不甲斐なさを
おんじは責め続けた。
「JIJIィィィイイイ!波紋の呼吸をしてくれぇぇぇぇぇええ!」
叫ぶ事しかできなかった。唯一自由なのは口・眼・耳・頭脳だけなのだ。
そんな願いも空しくJIJIは老婆に少しずつ取り込まれていく。
「あ、ああ……こうなってしまったら自爆スイッチを…」
ようやく正気を取り戻した夫妻が自爆スイッチのボタンに手をかける。
このままでは、世界一の商社どころか世界が無くなってしまう。
「まぁ待ちなよ、お婆ちゃん。」
ゆっくりと声がする方に眼を向けるとJIJIと目があった。



616 名前:JIJI 投稿日:2008/10/05(日) 16:00:48.65 ID:vrAWmh4/0


「押して駄目なら引く。外が駄目なら内からってね」
不敵ににやりと微笑むJIJI。その微笑みは嫌味がまったく無い。
屈託の無い少年の笑顔にすら見える。
「コォォォォオオオ……波紋ッ!!」
今度は違う意味で老婆の体が吹き飛んだ。
胴と足が分かれる。波紋が老婆の体内を駆け巡ったようだ。
二つに分かれた老婆に元に戻られぬように素早くロープで縛り
引っ張った。太陽の光を浴びせれば……
「太陽の光に弱いんですよね?お婆ちゃん!」
力が抜けない綱引きのような状態で、夫妻に問いかける。
老婆とJIJIの綱引きを見つつセバスチャンに指示した。
「そうです。今セバスチャンに扉を開けさせます!」
2人を跨いで扉に向かう。セバスチャンも必死だった。


620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/10/05(日) 18:02:25.36 ID:vrAWmh4/0
必死に老婆を引き上げる。こんなにも重いとは思わなかったのか
踏ん張っている。セバスチャンも彼に応えようと走る。
「もう少しです!もう少し寄れば陽の光を浴びせられます!」
セバスチャンの手が扉にかかり、開き始めている。
声援と扉という応えを贈ってくれた彼に対し、JIJIは
力の限りを振り絞って老婆を引きずった。
「NUUUAHHHHHHHHHHH!!」
光の届く所まで引きずり、セバスチャンが扉を開けた。
老婆は苦しみからか大きな奇声を上げはじめた。
「ざまぁみろ!太陽の光を浴びせてやった!」




完結してないのがザンネンです・・・
続きを見つけた方 ご一報下さい
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月刊桜坂通信 | ニュー速vip | トラックバック:0 | コメント:1 |
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[ 76 ] 名無しの仲良しさん 2008/10/06(月) 18:19 ID:t50BOgd.
(C)ZUIYO
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