しんのすけ「バイオハザードが発生 したゾ」の続き
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:11:22.16 ID:PlplbDop0
前回までのあらすじ
前スレを読めば分かる
ついでに風邪ひた
ひろし「何か悪いよな……勝手に人ん家に上がらせてもらっちゃ」
ケビン「こんな状況だ。緊急避難ってヤツ♪」
デビット「のワリには随分楽しそうだな」
実は、子供の頃から勝手に空き家に入る事が好きなケビンである。
しんのすけ「も~、人の家に勝手に上がったりするのは悪い事なんだゾ!
おじさんは母ちゃんに言われなかったの!」
みさえ「アンタは! 人の事言えないでしょ」
その後、一向はマンション内の安全を一応確認した後、勝手ながら3階の一室を使わせてもらう事にした。
建物内の住民は殆ど避難しているらしく、人の気配は殆ど無かった。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:13:12.12 ID:PlplbDop0
………………
ケビン「ってあああああ!!」
しんのすけ「な、これは!」
ケビン「しんのすけ! コイツを見てくれ、こいつをどう思う!?」
ケビンの指先には、冷蔵庫の中でキンキンに冷えたビール達。
そして3個パックのぷっちんプリンに冷凍庫のアイスクリーム。
この警察官、さっそく冷蔵庫あさりを始めている。
ウホッ、いいアルコール。
しんのすけ「すごく……おいしそうだゾ」
ケビン「 宴会(や) ら な い か ?」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:17:51.71 ID:PlplbDop0
しんのすけ「いいねいいね、100%グレープジュースある~?」
デビット「おい」
冷蔵庫の前で盛り上がっている男たちに、デビットがナイフを研ぎながらしずかな声をかける。
デビット「アルコールはやめとけ。酔っ払っちまったら、イザって時に逃げられんぞ」
彼も酒が嫌いでは無いが、この状況では生存確立を1%でも高めるべきだ、
それに酒は邪魔でしかないと判断した。
闇の世界を生きてきた事のある彼は、そこら辺を念入りにしないと気がすまないのだ。
デビット「ハッキリ言って、ここだって安全じゃあない……
今のうちに、決められる事は決めて」
ケビン「よ~し、じゃあコップも用意しないとな」
しんのすけ「ストレートでお願いします!」
デビット「…………」
聞いちゃいなかった。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:20:14.24 ID:PlplbDop0
デビット「人の話を聞けこのアワビ共があああああ!!」
段々突っ込みスキルが鍛えられていくデビットである。
しかし、警察官と闇の人間が一緒になって可能な限り一つの家族を守ろうとしてるのだから、世の中おかしな物である。
………………
ケビン「スパナは止めろよ、スパナは……」
巨大なタンコブをはやしたケビンは放っておいて、デビットはひろし達の様子を見に行く。
二人とも、入り口からも窓からも遠い寝室で、具合を悪くしたひまわりに付き添っていた。
二人の様子から一目で、ひまわりの容態がよくない事が分かる。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:23:48.92 ID:PlplbDop0
デビット「邪魔するぜ」
ひろし「あ、あぁ」
デビット「できる事はあるかい?」
ひろし「いや、大丈夫だよ」
みさえ「熱が全然下がらないの……」
ひまわりの頭を撫でながら、みさえが言う。
どうやら寝ているらしくスゥスゥと規則正しい呼吸をしているが、顔が青い。
みさえ「一体どうしちゃったのよ……今朝はあんなに元気だったのに」
一瞬したイヤな予感を、デビットは胸に押し戻した。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:27:16.23 ID:PlplbDop0
みさえ「ねぇ、もしひまわりに何かあったら…… 私、どうしたら……」
ひろし「バカな事言うんじゃねえよ! そんな事、あるわきゃ」
デビット「赤ん坊ってのは突然具合を悪くするもんさ、心配無い」
みさえ「どうしてそんな事が分かるのよ!!」
みさえ「私はね、あなたとは違って、ひまわりが生まれた時からこの子の母親やってるんですからね!
あなたに何が分かるのよ、ねえ!!」
ひろし「お、おいみさえ」
みさえ「大体、シロあっさり見捨てて! アンタ何でこんな状況でそんな顔してられるのよ!
もう沢山よ、こんなの!!」
マンション前のアレで元気を取り戻したように思えたが、それは間違いだった。
飼い犬を失い、更に娘までこの状況……そして何時終わるかも分からない惨劇。
ハッキリ言って、今日は色々ありすぎた。
神経の図太いみさえだからこそ、まだ恐怖や不安を怒りに変換できているのだ
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:28:30.92 ID:PlplbDop0
デビット「ゴチャゴチャうるせぇぞ」
みさえ「な!!」
デビット「そんなに騒いで、あのクソ共が寄ってきたらどうすんだ。静かにしろ」
みさえ「この~~~~」
デビット「はんっ」
自分の頬を抓ろうと差し出された手を、思いっきり掴む。
みさえ「いたたたたたたた!」
ひろし「みさえ!?」
ギリギリギリギリ……
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:31:29.36 ID:PlplbDop0
デビット「俺を殴って状況がよくなるなら、別に殴られてやってもいいさ。だがな」
みさえ「ちょっと、離してよ! 痛い」
デビット「アンタがヒステリックになったせいで、あの坊主やソイツだって危なくなるんだぜ? 分かるか?」
ギリギリギリギリギリ……
デビット「分かったら少しは冷静に」
ドバキッ
頬骨にまで届く強い衝撃と共に、身体が壁にまで吹っ飛ばされる。
殴られた事に気付くまで数秒、殴ったのが眼前の冴えない中年だというのには更に数秒。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:34:42.37 ID:PlplbDop0
ひろし「勝手な事言ってんじゃねえぞ……」
デビット「…………」
ひろし「たとえどんな事になっても! みさえがヒステリー起こしたって、俺が支えてやる!
だからお前なんかにとやかく言われる筋合いなんて物は無ぇ!!」
デビット「勝手にしな」
口に付いた血を拭い、そのまま部屋から出る。
だがその前に一言。
デビット「あの犬、シロっていうのか? この場にいねえから、お前に言っとくぞ」
デビット「………………ありがとよ」
そのまま扉を閉めて、姿は見えなくなった。
………………
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:36:35.53 ID:PlplbDop0
デビットが見えなくなった事で、ひろしはその場にへたり込んでしまう。
家族のためとは言え、あそこまでコワモテの男に喧嘩を売ったのだと思うと、腰が抜けてしまった。
みさえ「あなた……」
ひろし「は、あはははは……」
まただらしないと言われるのだろうか?
そう感じて笑って誤魔化すが、
みさえ「ごめんなさい、ありがとう……」
ひろし「あははは、はははは」
ひろしの耳に入っちゃ居ない。
ひろし(やっぱ、謝っといた方がいいかなぁ~)
そう思ってしまう辺り、やはりひろしである。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:38:05.42 ID:PlplbDop0
………………
デビット(…………)
しんのすけ「何でダメなの? 父ちゃん母ちゃんだってお腹すいてるでしょ?」
頑としてひろし達の元へ向かおうとするしんのすけの手には、さっきの冷蔵庫から漁って来た駄菓子類が握られている。
ようするに、さっきの冷蔵庫漁りは自分のためでは無く、家族の事を考えてだったのだ。
ドイツもこいつも、見せ付けてくれる。
デビット「しばらく待ってやれ。 お前の父ちゃん達も少し疲れてるんだ」
しんのすけ「なるほど、しばらくお二人にさせてあげろって事ですな」
デビット「まぁ、そうだな」
しんのすけ「布団とティッシュ持ってく?」
スルーした。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:40:46.35 ID:PlplbDop0
デビット「しばらく、待ってやりな。お兄さんなんだろ?」
しんのすけ「ホイ、オラ待つ!」
まさか、自分がこんな言葉を言う日が来るとは思わなかった。
つくづく、世の中はおかしいもんだと思う。
それにしても、子供の癖に以外としっかりしたもんだ。
ケビン「おいデビット来てくれ! ヤバイっ!!」
突然のケビンの声。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:44:23.87 ID:PlplbDop0
ケビン「早く! 早く来てくれ!」
デビット「!!!」
デビットを呼ぶその声は、必死なんてものでは無い。
一刻を争う事態が発生した……!
デビット「坊主、そこに居ろ!」
しんのすけ「ヤダ!」
デビット「そうか……じゃあ、死ぬなよ!」
説得する暇は無いだろう。
ただ一刻も早く、仲間の窮地にかけつけなければ。
彼は愛用の工具(この状況では、こんなのでも立派な武器だ)を手に、声のした居間へかけつけた。
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:48:02.31 ID:PlplbDop0
ケビン「じゃ~~ん」
デビット「………………何だ、そりゃ」
ケビン「見ての通り、お宝だぜ!」
駆けつけたその瞬間、デビットの目の前に理解できない物が突きつけられた。
女の裸が乗っている四角いパッケージ……いや、何かはすぐに理解できる。
ただ、認めたくないだけだ。
しんのすけ「おおぉぉぉ!!!」
ケビン「何だ~お前も来ちまったのか」
しんのすけ「ねえおじさん! コレ、コレ!」
ケビン「仕方ねぇ~ミサエ達には内緒だからな!」
しんのすけ「それって、男同士の約束?」
ケビン「そう、男同士の約束だ!!」
なにやら訳の分からん誓いを立てる二人を他所に、デビットは途方にくれた。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:52:53.51 ID:PlplbDop0
チャキ
ケビン「へ?」
デビット「…………」フルフルフル
眉間にひんやりとした感触。
気付けば、いつの間にか抜き取られたハンドガンの銃口が自分に向けられていた。
ケビン「ちょwwwwまwwww それは止め! それは待て、マジで!」
デビット「アディオス、ケビン」
その後、かけつけたひろし達に止められ、事無きを得たのだが、
『あの目はマジだった』と後々ケビンは語ったと言う。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/29(月)
00:54:10.05 ID:PlplbDop0
とまぁ、バイオハザードSSの癖に、ゾンビが1匹も出ないパートを書いて、一旦寝ます
2 名前:1
投稿日:2008/12/31(水) 02:40:34.74 ID:zYeEAzWw0
夜が訪れた。
アンブレラのアフターフォローは完璧なのは間違い無い。
最初のアンデッドが『変質者だと思われていた時点』からすでに彼らは情報機密化に勤め、ものの数時間で春日部の閉鎖を完了してしまった。
検問に辿り着いた人々は脱出を許されず、確実な死が待ち構えている春日部へと押し返される。
この春日部に安全な場所なんてもはや無くなったのだから、当然安全な場所に辿り着けた者などはいるはずも無い。
閉鎖前に脱出できたとしても、『二度と戻らない』事情聴取へと連れて行かれるだけだった。
もはや街の外に動く物は殆ど見当たらない。
時々、獲物の匂いにつられたアンデッドが一部の民家や施設に群がっていくのが確認できるだけ。
彼らが愛した春日部は、デシリットル単位のウイルスによって、ゴーストタウンと化したのだった。
すでに、ひろし達が最初のアンデッドと出会ってからすでに半日が経過していた。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
02:42:36.54 ID:zYeEAzWw0
「ああああああ あ あ あ あああ あ!!!」
突然の金切り声。
それは、ひまわり組で眠っていた彼らを起こすには十分すぎるものだった。
風間「あ! あ、あ、あ、あひあ――――!! マ、マ、マ……」
シンディ「カザマ君!」
風間「ママが! ママが! ママが、ママががあああああああ」
布団を足で蹴っ飛ばして、短い四肢を精一杯バタつかせる風間。
そんな彼に真っ先に駆けつけるのは友達でも、先生達でもなくシンディだった。
抱きかかえた直後、すぐに彼が下着を濡らしている事に気付いたがそんな事は構わない。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
02:44:25.40 ID:zYeEAzWw0
風間「あ、あ、あ、来なっ来なっいで、来ないっで!」
シンディ「大丈夫、大丈夫よ」
風間「誰か、だっだれっか、居てよ! 居て、居て、いてっひ、わ!!」
シンディ「ここに居るわ……安心して」
変わらない力でやさしく抱きしめ、頭を撫で付ける。
彼女の胸の中で、少しずつカンシャクが収まっていく。
風間「うぇぇ、グズ……グズッ……あぁぁ、グズ……あぁぁ……」
………………
よしなが「ごめんなさいね、こんな時間に起こしちゃって」
シンディ「いえ、大丈夫です。どうせ殆ど眠れませんから……」
よしなが「あら……まだ若いんだから、たまにはゆっくり休んだ方がいいわよ。
その子は私にまかせてくれれば……」
シンディ「申し訳ありません、もうちょっとこのまま……」
まつざか「大丈夫なの? あなただって早く着替えないと、風邪ひいちゃうじゃない」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
02:47:17.91 ID:zYeEAzWw0
泣きつかれたのか、安心したのか、風間はシンディの胸の中で寝息を立て始めた。
起きてしまった他の園児の相手は、父兄や上尾先生にまかせて、二人はシンディと風間についている。
まつざか「それにしても、随分と子供の扱いが上手いのね」
シンディ「私のお母さんが保母さんをやってたんです。それで手伝わされて、そこで色々覚えました」
まつざか「へぇ……大変だったでしょ? 毎日毎日悪ガキ共の相手で」
シンディ「はい。……でも、この子達の未来を作るお手伝いになるんだって思うと、不思議とやる気が出て……
それで、私も大人になったらお母さんみたいな仕事につきたいって。
おかしいですよね?」
多少、はにかむようにしてシンディは笑った。
よしなが「そんな事ないわ。 そうやってお父さんお母さんに憧れるっていうのはいい事よとても。私だってそうだったんだから」
シンディ「クスッ……あなたも同じなんですか?」
まつざか「あら、私もよ」
シンディ「実を言うとジョージやジムもなんです」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
02:49:10.47 ID:zYeEAzWw0
ちなみにこの場にはいないケビンの父親も警察官であり、彼もまた幼少時父親に憧れて警察官になったタチである。
つまり彼らのメンバーの大半は、何時かは親の職業に憧れソレを目指したのだ。
最も……
シンディ「お母さんが身体を壊したりして、色々あって結局諦めちゃいましたけどね……」
アリッサなどはそれが馬鹿馬鹿しいように思えて、ジムは挫折、
それぞれ色々な理由で生き方を変えてしまい、実現したのはケビンと、今は日本で診療所を開いているジョージだけなのだった。
よしなが「ねぇあなた」
シンディ「はい?」
よしなが「この事が解決したら、教員になって私達の幼稚園に入らない」
まつざか「あら、たまにはいいアイデア出すのね」
シンディ「?」
よしなが「たまには、は余計よ。ねぇ、いいでしょ?
あなただったら、きっと子供に好かれるわ」
突然の申し出に、思わず戸惑ってしまう。
シンディ「ハハ、考えておきます」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
02:52:59.84 ID:zYeEAzWw0
適当に誤魔化す事にした。
もう一度大学に入りなおすだけの金銭的余裕何て無いし、そもそも子供好きというだけで続けられるものか?
幼稚園教員なんて自分に向く職業などとは……
そう思った所で、いきなり上尾先生が傍らに立っていた。
上尾「あの、その……師匠!!」
シンディ「What?」
まつざか・よしなが「「ね?」」
ヨーコ「私は空気」
………………
案外目指してもいいかもしれない、そんな事を約一名が思っている頃。
幼稚園の裏口付近にあるマンホールを囲う3人の人影があった。
アリッサ「ホントに、ここが外に繋がってるの?」
ジム「っていうかまた下水? このズボン200ドルもしたんだよ」
園長「ええ……ですが」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
02:54:26.01 ID:zYeEAzWw0
柵を乗り越えてきそうなアンデッドに怯えながらも、園長は必死に言葉を紡ぐ。
園長「本当に大丈夫なんですか? 助けを呼んでくるなら私も」
アリッサ「あなたはいいわよ(顔怖いし)。本当なら一人でも良かったんだけどね」
ジム「大丈夫だって、アンタはここに居てよ(顔怖いから)」
アリッサ「それに、イザってなったらコイツがあるわ」
園長「ひえ」
ジム「うわお!」
二人ともそれぞれ驚きの声をあげる。
アリッサが取り出したのは、こんな夜中にも黒光りする拳銃だった。
この国にはあまりに不釣合いと言う事では、ケビンのソレと同じだ。
違うのは、アリッサの場合は完全な密輸で持ってきたと言う事だが。
アリッサ「じゃあ、行って来るわ」
ジム「時間になったらちゃんと開けてくれよ~」
そして二人は、いまだ唖然としている園長を置いて、マンホールへと消えていった。
…………………
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
02:58:56.67 ID:zYeEAzWw0
あれから、逃げるように園長は建物の中に入った。
園長「はぁ……」
廊下を歩きながら、肩にズッシリとした重みを感じる。
この事態が発生した時から、彼は幼稚園から一歩も出てはいない。
そのためアンデッドと直接接触するきっかけなど無く、どこか非現実めいた物に覚えていたのだ。
園長(あれ、ホンモノですよね……)
人間の進化とは、決まって大量生産化か効率化に分けられる。
そして、拳銃はそれの後者にあたる。
それを使う方法は一つ、弾を入れる、狙う、指を『チョッピリ』動かす。
それで終わりだ、人の命が簡単に奪われる。
その人がどんな善人でも、たとえ愛する人がいても、何の関係も無い。
園長は、人類の進化は必ずしもいい事だけでは無いと思う。
実際拳銃の開発は、人の命をトコトン軽くする事に成功した事と同義だ。
大量生産化にあたる、原爆でも……。
人の進化、何かを開発する事は、時として『何かを壊す事が便利になる』事でもあるのだ。
もちろん、園長がそんな難しい事を考えているわけでは無い。
怖かった。
自分が、もう命のトコトン軽くなった世界に足を踏み入れた事が。
もしかしたら、自分や愛する妻、同僚の先生方や園児、田舎の両親……。
彼らだって、状況が揃えばあっさりと……。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:00:23.77 ID:zYeEAzWw0
園長(やめましょう)
意識が遠くなるのを押さえ、園長は本来の目的を思い出す。
そこでようやく、保険室の扉を通り過ぎているのに気付いた。
そうだ、自分はジョージ先生にお礼を言おうとここに来たんだ。
迷惑かもしれないが、それでも何もしないなんて冷たいだろう。
それに、今後の事も話した方がいい。
彼は、やけに重たいノブを回した。
ギィィィィィ ……
………………
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:02:42.39 ID:zYeEAzWw0
明かりの消えたリビングに、ケビンだけが目を光らせている。
さっきの騒動で、最終的にデビットから寝ずの番を押し付けられてしまった。
まぁ眉間に穴があくよりかはマシだろう。
それに、警察時代から徹夜なんてよくあった事だ(主に始末書で)。
明け方に少し寝れば集中力が途切れる事は無いだろう。
とは言っても、部屋にいるのはしんのすけとひろし、そしてデビットだけだ。
みさえはひまわりを落ち着けたいと、別室にいる。
まぁ、アイツ等にとっちゃ俺たちゃ部外者だ。
病気で弱った娘を信用できるか微妙な連中と一緒にしたくないって気持ちも分からないでも無い。
ムクリ
ケビン「あん?」
突然、しんのすけが起き上がって寝ぼけ眼を擦る。
しんのすけ「…………おトイレ~」
半分寝ているのだろう。
その足取りは右へ左へとふらついている。
街中を歩いたら、ゾンビと間違えられるかもしれない。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:04:03.73 ID:zYeEAzWw0
ガチャ
しんのすけ「う~トイレトイレ」
ケビン「ストップストップ。
しんのすけ、お前の世間じゃトイレはタンスの中なのか?」
しんのすけの身体の向きを変え、廊下への扉を開けてやる。
言葉を理解してくれたのか、ちゃんと言われた方向に進んでくれた。
ガチャ
ケビン「そこは風呂場だ」
ガチャガチャ、ガチャガチャ
ケビン「そこは玄関だ」
カチャ
ケビン「それはトイレーン・P・マクサートのシングルCDだ」
ケビン
ガチャ「それは俺だ……あれ?」
ケビンから注意を受けるたび、目を開けながら方向転換をする。
てかコイツ、ホントは起きてるんじゃね? と思ったりした。
まぁ彼は彼で面白がってるのだが。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:04:43.40 ID:zYeEAzWw0
ガチャ
ケビン「あっそこは……」
一瞬注意が遅れてしまったためか、しんのすけはそのまま中へと進入してしまう。
ケビン「オイ、戻れしんのすけ。そっちはトイレじゃないぞ!」
しんのすけ「……お」
大きめの声を出されて、ようやく我に返った。
………………
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:08:01.83 ID:zYeEAzWw0
ジョージ「…………」うつら うつら
目の前で、ジョージは椅子に座りながら船をこいでいる。
さすがに、今日一日で疲れてしまったのだろう。
無理をさせすぎてしまった。
園長「…………」
何故だか、安堵感が沸いた。
そうだ、人の命が軽くなっているなんて言ったけど、この人は必死に子供達を助けようとしてくれた。
命の重さを、自分ですら深く考えていなかったのに、それを心がけてくれる人はいるのだ。
そう思うと、先ほどから肩をしばりつけていた何かが、アッサリと解けた気がした。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:09:21.90 ID:zYeEAzWw0
シーツでもかけて、ゆっくり休ませてあげよう。
園長は、開いているベッドへと駆け寄る。
ゴソゴソ…
ゴソゴソ……
園長「!」
どうやら、子供を一人起こしてしまったらしい。
ベッドの中で、やけに大きな塊が動いている。
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:11:11.99 ID:zYeEAzWw0
園長(ホントだめですね……私って)
目的を果たしたら、早く教室に戻ろう。
そう思い、足音を出来るだけ立てないように後ろへ引いた。
シーツが、ゆっくりと落ちた。
そこにあったのは、少し三角がかった特徴ある坊主頭……佐藤マサオ。
マサオ「ヴ……」
何かを租借している口からは、何か赤黒い物が見えた。
それにしても何で、マサオ君は顔の半分が赤いのだろう?
全身が、血で汚れているのだろう?
園長「…………へ?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:11:50.73 ID:fyo+UhGSO
おにぎりかよ…
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:13:42.68 ID:zYeEAzWw0
園長「…………へ?」
もう、訳が分からない。
シーツの下には、もう一人いた。
薔薇組の女の子で、名前はたしか花子だっただろうか?
顔の半分がグチャグチャになっていて、名前が分からない。
もう、訳が分からない。
……………………
しんのすけ「母ちゃん」
みさえ「くかー」
しんのすけ「ダッシュ妖怪オバタリアン」
みさえ「スピー」
さすがに一日あって疲れたのだろう。
壁によりかかり、グッタリと寝ている。
見ると、シーツに包まれひまわりもまだ寝ている。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:18:01.56 ID:zYeEAzWw0
しんのすけ「もー、オラがいないとダメなんだからー」
枕を持ってきてあげないと、風邪ひいちゃうゾ。
そう思って、しんのすけは余っている枕は無いかと、ひまわりが寝ている唯一のベッドに向けて歩く。
その瞬間、ひまわりが目を開けた。
しんのすけ「…………ひま?」
様子がおかしい。すぐにそう思った。
しんのすけの知るひまわりの目は、いつも何か面白いものは無いかなとクリクリ動く、愛らしい目だった。
彼を見つめる時、ひまわりは『次は何をするのかな、次は何をするのかな』と言葉は無くとも伝わってくる、
キラキラとした目で見つめてくれた。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:19:23.51 ID:959/j9jxO
まさか・・・
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:20:37.70 ID:zYeEAzWw0
それが、今はもう濁っている。
しんのすけを見つめたまま、何のリアクションも起こさないのは、
まるで彼が何なのかを判別しているように思えた。
ひまわり「あ……あぁ……」
やがて、ひまわりはしんのすけにゆっくり手を伸ばす。
ケビン「おいしんのすけ、どうした?」
しんのすけ「ひまわりが……?」
ひまわり「あぁ、あぁ……」
その小さい手がしんのすけの頬に触れる。
体温は、もう無かった。
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:20:53.24 ID:zYeEAzWw0
……………………
それはもう、死んでいた。
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/12/31(水)
03:22:05.12 ID:zYeEAzWw0
ここいらで寝ます
良い年末を
ここで・・・ここで終わっちゃったんです
誰か続き知りませんか?
>>1がもし見てたら続き書いて下さい><
それとも ここで終わりなのかなぁ・・・
コメント
この記事へのコメント
すぬーぴー 2009/01/08(木) 12:49 ID:-
面白かったが・・続きは?
名無しの仲良しさん 2009/01/08(木) 15:16 ID:-
なんという・・・
名無しの仲良しさん 2009/01/08(木) 19:22 ID:-
えええええええええええええええええ
名無しの仲良しさん 2009/01/10(土) 18:12 ID:-
続きが非常に欲しい…
名無しの仲良しさん 2009/01/27(火) 06:41 ID:-
ちょwww気になるじゃないかwww
名無しの仲良しさん 2009/02/02(月) 01:24 ID:-
非常に残念極まりないが…書き手は飽きてしまったようだ
何でもいいじゃん! 2010/07/10(土) 07:22 ID:-
続きをプリーズ!
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